第81話 コウタ陥落
「こんな暮らしを味わったら元に戻るなんて出来ないよ・・・」
コウタは部屋を満喫して言葉が漏れる・・・
ホテルで清潔なシャワーを浴び、ふかふかの清潔なベッド、何故か映るテレビから流れる日本の番組、そして御馳走になった夕食は日本でも食べたことの無い高級料理・・・
かたや、教会にあるのは井戸から汲んできた水で手洗いした奇麗だかよくわからない布を使い体を拭き、簡素な固いベッド、テレビどころか娯楽を持ち込む事も出来ない教会の風習、そして、固いパンと薄い味付けのスープ。
コウタが骨抜きにされるのも致し方無い話であった。
翌朝・・・
「ゴウさん、お願いがあるのですけど・・・」
「なにかな?」
「僕も此処に住まわせてもらえないでしょうか?」
「いいよ。」
「図々しいお願いなのはわかってますが・・・
あれ?いいんですか?」
「構いませんよ、ただ節度ある行動を取ってください、目に余る行為があればホテルだけでなく駅、鉄道の使用も禁止にしますけど、それで良ければ。」
「節度ある行動とは?」
「日本人として恥ずかしく無い行動でしょうか?
仮に言うなら命を狙ってくることは論外として、私達を傷つける行為や、お客様に危害を加える行為ですね、多少の素行が悪いぐらいなら注意から始めますから、常識的な範囲で過ごしてくれればそれで良いです。
まあ、コウタさんは騎士さんの信頼を得ていたようですのでそれ程心配してませんけど。」
「それだけでいいんですか?
その家賃とか・・・」
「同じ日本人なんですからそんな水臭い事は言いません。
それにこのチカラはサファさんから貰ったチカラです、だからこそ私を頼って来てくれた人の受け皿になりたいと思ってます。」
「ありがとうございます!」
コウタはゴウの器の大きさに感動していた、いくらチカラを貰ったとはいえ、それはゴウの物である、自分も魔法のチカラは得ているがそれを日本人の為に使おうなんて考えていなかった。
「他に日本人を見かけたら連れてきても良いですよ、条件はさっき話した事と同じです。
人の迷惑にならない人なら歓迎します。」
「・・・リエさんは?」
「あの人は私にいきなり攻撃してきましたから、私としても命を捨ててまで援助するつもりはありませんよ。
出来る限り援助するという話しなだけです。」
「そうですよね、なんでゴウさんに攻撃したのか・・・」
コウタもリエから攻撃した理由は聞いたがゴウの考え方を聞く限り、ミユキを無理矢理奴隷にするようには思えなかった。
「友人が奴隷になっていたのですから、怒る気持ちはわからなくは無いですけど、それでもいきなり攻撃されれば私も自己防衛するしか無いですから。
あっ、別にコウタさんがリエさんに会うことを否定するつもりはありませんよ。
その点は自由にしてくれても構いません。」
「ありがとうございます、ですが私はあまり会うことは無いかなと思います。
元々日本にいる時もクラスメイトですが、それ程話している訳でもありませんから。」
コウタはリエと会う事を控えようと考える、元々親しい友人という訳でも無い。
ゴウからすれば自分を傷つけようとした人にいい感情があるはずが無い、その相手と仲良くすれば必然的に自分にもいい感情は生まれないだろう。
コウタは保身の為にリエを切り捨てる事にしたのであった・・・
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