第80話 コウタ帰還

「戻って来ましたゴウさん。」

「コウタさん、さっき連絡があって君の釈放が決まったそうだよ。」

「本当ですか!ありがとうございます!」

コウタはふかふか頭を下げる。

「気にしなくて良いよ、それよりコウタさんはこれからどうするつもりかな?」

「これからですか?」

「そう、この世界でどう生きていくかということかな?」

「どう生きていくかですか?」

「ええ、帰る方法があるかも知れませんが現状見つかっていません、だからこそ生活の基盤を得ることは大事だと思いますよ。」

「私は教会に属していますからそれについては大丈夫だと思います。」

「たしかにそうですね、それなら何かあれば訪ねて来てください、同郷の者としてなるべくチカラになれるようにしましょう。」

「ありがとうございます。」


「それと今日はもう遅くなったので泊まっていきますか?」

俺は日がだいぶ沈んでいるのでコウタに泊まるように提案する、駅の位置は郊外であり、これから町の中に戻るとなればそれなりに時間が掛かる、日本と違い治安に心配があるので、男とはいえ夜に町を歩くのを推奨したくはなかった。


「たしかにこのままだと夜になりそうですね、御迷惑じゃなければ一晩お世話になってもよろしいですか?」

「構いませんよ、幸い部屋は沢山ありますから。」

「部屋が沢山?」

コウタの頭に疑問が出るがすぐに解決することになる。

ホテルのロビーに案内された瞬間理解できたのだ。


「ゴウさん、ここって高級ホテルじゃないですか!」

「そうだね、東京駅にあるホテルだよ、ここなら日本の生活を楽しめるよ。」

「楽しめるとかそんなレベルじゃないです!」

教会で清貧の暮らしをしていたコウタからすれば日本に住んでいた時でも味わうことの無かった高級ホテルに目が輝いていた。


「まあ好きな部屋を使ったらいいよ、食事はいくつかあるレストランで食べれるから、好きな所で食べてもいいし、俺達と一緒でもいいけどどうする?」

「ご一緒させてください!!」

コウタの答えは一つであった、こんな高級ホテルで一人で食事など緊張して食べられそうに無い、それならみんなと一緒の方が心から食事を楽しめそうだった。


「それなら食事の時間になれば呼ぶからそれまで部屋でのんびりしているといいよ。」

俺はコウタを部屋に案内した後、食事の時間までのんびりするのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る