第77話 問い合わせ
「コウタ?」
マルコが俺の所にコウタという男を知らないかと、問い合わせてくる。
「そうだ、この宿にいる者と知り合いだとか言っているがハンマーを持って襲撃してきた男と一緒にいた為に捕縛された男だ。」
「ハンマーを持って襲撃か穏やかじゃないね。」
「そうだな、国としてもこれ以上失態を重ねる訳にはいかないから厳重な処罰が行われる予定なのだが、このコウタという男は治癒魔法が使えて神父として活動していた為に同情的な声が大きくてハンマーを持った男を説得していたのではないのかという声も上がっているんだ。」
「神父さんか・・・それにコウタという名前、マルコ、そのコウタさんは他に何か言ってる?」
「お前と同郷だと言っているな。」
「多分その子はミユキさんの知り合いかも知れない、一度連れてきてもらっていいかな?」
「いいのか?」
「知り合いの可能性があるからね、確認はしておきたい。」
「わかった、手配しよう。」
マルコは屋敷に戻り、コウタを仮釈放する手配を整えるのであった。
「神父、一応先方がお会いしてくれるそうです、その為に仮釈放が認められました。」
「本当ですか!良かった・・・」
コウタの瞳から涙が溢れる。
コウタの牢屋での扱いは良いとはいえ、所詮牢屋である、日本人からしては有り得ない程の汚い部屋に不味い飯、そして罪に問われるかも知れないというストレスから心身ともに疲労していたのだ。
「おい、なんでコウタだけ牢屋から出るんだよ!
俺も出せよ!」
マコトは苛立ちながら檻を蹴る。
「黙れ!実行犯!ハンマーを持って襲撃したのは間違い無いんだ、よくも神父を巻き込んでくれたな!」
「いやいや、巻き込むも何もそいつも同じだ!」
「何を言っている、神父はお前を説得しようとしていた所に運悪く憲兵が来たということになっているんだ、犯罪者のお前と同じはずが無い。」
「待て待て、なんでそんな事になっているんだ!おいコウタ!お前からも何か言ってくれよ!」
「・・・罪深い者よ、暫し反省しなさい。
ラスカ兵士長、私が未熟だった為に彼の者を思い留める事ができませんでした、神に仕える身でありながら自身の未熟を恥じるばかりにございます。」
コウタはマコトから視線を逸らし、以前治療をした知り合いの兵士長ラスカに向き合う。
「神父はよくやったと思います、しかし人の言葉を聞かぬ者は多くいるのです、お気に病む事はありません。」
「・・・ラスカ兵士長、一先ずここから出てもよろしいでしょうか?」
「これは失礼しました、さあこちらに。」
「おいコウタ!俺も出せよ!おい!聞いてるのか!」
コウタは振り向く事無く牢屋をあとにするのであった。
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