第74話 不審者

「くっ!開かねぇ!」

マコトが扉に手をかけるもののガラス張りの扉が開く事は無かった。

「開き方があるのか、それとも何かいるのかな?」

コウタは開け方を考えているのだが・・・


「どうせガラスだろ、割っちまえば中に入れるんじゃないか?」

「そんな単純な話かな?今まで駅に入れなかった事も考えると何かあるのかも知れない。」

「まあ、とりあえず試してみようぜ、駄目だったら別の方法を考えればいいじゃん。」

「そんな単純な話じゃないだろ?」

「まあ、いっけーーー!!」

マコトはコウタに止められつつも全力で扉を蹴るのだがまったくびくともしていなかった。


「蹴るだけじゃ駄目だな、ちょっと待ってろ。」

コウタを扉の前に残し、マコトは一度外に出ていく。


「マコト、何を持ってきたんだ?」

「ハンマーだよ、これならガラスぐらい割れるだろ。」

マコトが持ってきたのは振りかぶって使うような大きめのハンマーであった。

「こんなものどこから持ってきたんだよ。」

「勤め先の倉庫に置いてあった物を少し借りてきたんだ、さあいくぞ!」

マコトがハンマーを振りかぶった所で・・・


「お前達!そこで何をしている!!」

憲兵が二人に声をかけてくる。

「「えっ!」」

「怪しい奴め、大人しくしろ!」

「ま、待ってください!何もしてません!!」

「ならそのハンマーはなんだ!!」

「こ、これは・・・」

「ここには国賓となる方がお暮らしになられている、そんな場所にハンマーを持って襲撃しようとは・・・」

「えっ?国賓、ちょっとどういう事です?」

「そんな事はどうでもいい、大人しく捕まるなら良し、抵抗するなら斬る。」

「て、ていこうしません!!だから剣をしまってください!」

コウタはすぐに手を上げて降参する。


「ならば大人しく縄につくんだ。」

コウタは大人しく従ったのだが・・・


「い、いやだ、捕まりたくない・・・」

「マコト、どうした、抵抗すると斬られるんだよ、まずはハンマーを捨てて!」

「嫌だ!捕まると奴が奴が来る!!」

「こいつ抵抗する気だな、おい応援を呼べ、取り押さえて背景を吐かせてやる!!」

「嫌だぁぁぁ!!」

マコトは抵抗虚しく憲兵達に捕まる事となる・・・


「お前達はあそこで何をするつもりだった?」

大人しく捕まったコウタの取調べは比較的穏やかに進められていた。

「僕達と同郷の人が中にいるはずなんです、どうか連絡をお願いできませんか?」

「同郷と言ってもなぁ・・・」

「お願いします、捕まっている事を知ったら助けてくれると思うんです、それぐらいには親しいと思ってます。」

「神父さんが言うから何とかしてやりたいのだが・・・」

憲兵達の中にはコウタの治療を受けた者もいた為に出来ることなら助けてやりたいという気持ちはある、ただ相手は国賓として国に定められた者である、憲兵といえど問い合わせすることに二の足を踏んでいた。


「なぁ、アレス伯爵家から連絡取れないか、あそこの子息が出入りしていただろ?」

「アレス伯爵家なら俺の遠い親族になる、ちょっと連絡してみようか。」


これまでの行いからコウタの味方になろうという者が現れる。

「神父さん、時間がかかるかも知れないが連絡してみよう、詳しく伝える事を教えてもらえないか?」

コウタは幸いな事に顔見知りがいたお陰でそれ程酷い扱いを受けることは無かったのだった。


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