第70話 古の魔法使いユミ
「ゴウ様、この国の成り立ちをご存知でしょうか?」
「たしか建国にあたり古の魔法使いが活躍したとかいう話ですか?」
「はい、かつてユミ様という偉大な魔法使いがおられたのです、その方が今の国を創り上げたと言っても過言ではありません、しかし、建国後醜い権力争いを引き起こしてしまい、ユミ様はその醜さに嫌気をさしてしまい、出仕するのを止めたそうです。
当時初代国王が探したのですが、見つかったのは書き置きだけであり、そこには自分が仲間と思った者達が争う姿は見たくない、自分の言葉がまだ届くなら争いを止めて欲しいと、そして、もし同郷の者が国をおとずれる事があれば庇護して欲しいと。」
「でも、自分はニホンから来たのであり、ヒホンではありませんよ。」
「ええ、そこが相違点なのですが・・・
ゴウ様がお使いになられているチカラがユミ様がお使いになられたと言われているチカラに似ているのです。」
「私のチカラに似ている?」
「伝承に拠ればユミ様は瞬時に建物を建てる事が出来たそうです。」
「たしかにそれは似ていますね。」
「そうです、それをふまえ私達はゴウ様を古の魔法使いではないのかと考えているのですが?」
「でもヒホンじゃないだよな。」
俺が少し考え込むと隣にいたミユキが俺の耳元に話しかけてくる。
「あのゴウさん、もしかして文字の読み間違いじゃないでしょうか?
日本と漢字で書くとヒホンとも読めますし。」
「いやいや、漢字で伝わる事なんてある?」
「ゴウ様!漢字とおっしゃいましたか?」
俺とミユキの会話が聞こえたのかアリサが反応を示す。
「え、えーと、もしかして漢字があるのですか?」
「ヒホンの文字だと言われてまして、ユミ様の残された書物に存在している物です。
現在は学者がその読み方を解読している古代文字にあたります。」
「じゃあ、ヒホンと言っているのはこれのこと?」
俺は手元に置いてあったメモ用紙に漢字で日本と書く。
「そうです、その文字です!ヒホンと読むのではないのですか?」
「たしかにこの『日はヒ』とも読むけどこれはニホンと読むのが正しいんだ。」
「そうなんですか!日にちを表す言葉と伝わっておりましたのでこれまで『ヒ』と読んでおりました。」
「まあ、たしかに読めないよね・・・
アリサさん、ユミ様の残した書物を見ることはできるかな?」
「・・・私の一存ではお答えできません。
ユミ様の残された書物は現在国宝として扱われており、選ばれた学者のみ閲覧し研究する事が出来るのです。
私の方からお口添えする事は出来ますが、如何いたしますか?」
「出来るようならお願いしたいかな?同じ国の出身者として何か残されていないか気にはなるし。」
「わかりました、手配致します。
父も今回の引け目がある以上、否とは言わないと思います。」
「ありがとう。
堅苦しい話ばかりで疲れただろ、少し一息入れようか、ミユキさんお茶とケーキを持ってきてもらえる?」
「わかりました。」
ミユキはケーキの用意の為に少し部屋から離れる。
「ケーキ・・・」
一方、ケーキの言葉を聞いて目を輝かせているアリサがいたのだった・・・
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