第68話 アリサ王女
報告を受けたクルトは頭を抱えていた。
「何故こうなるのだ・・・」
リスクが頭を下げればあとは迷惑料を払って終わりのはずだったのに事態は悪化していく、第二王子の乱行を知れば平民は不満に思うだろう、今すぐに何かあるとは考えにくいが王家に対する不信感を抱いた事は想像に固くない。
「陛下、ご心痛の所を申し訳ありません。
事情を知る者として罷り越しました。」
「マルコすまんな、くだらぬ事をさせておる。」
「陛下!私のような者に頭を下げないでください。」
「どのような立場であれ、頭を下げておさまるならそれが最善である。
・・・リスクにはそれがわからぬとは。」
クルトの顔に苦悩に満ちた深いシワ生まれる。
「陛下・・・」
マルコは何も言えなくなる、クルトの悩みの解決にチカラになれていない自分を不甲斐なく思うのであった。
「父上、私が王家を代表して謝罪してきます。」
アリサが悩むクルトに声をかける。
「アリサ、何故お前が謝罪する必要がある?」
「これは王家が引き起こした問題にございます。
誰か王族が頭を下げる必要があるとは思いますが・・・
ここまで拗れては兄リスクに頭を下げてもらうのは不可能でしょう。
他のお兄様も継承権が絡み素直に謝罪とはいかないはずです。
継承権に関係無い自分なら王家の問題として謝る事が出来ます。」
「・・・たしかに他の者では角が立つか、それに女性のアリサの方が話しやすい事もあろう。
アリサよ、すまぬが謝罪に行ってもらっても構わないか?」
「はい、必ずや古の魔法使い様のお許しを得てきます。」
翌日、アリサは駅を訪れる。
「私は第一王女アリサと申します、先日兄リスクが引き起こした問題に王家を代表して謝罪致します。」
アリサは入口前に立ち第一声で謝罪する。
その姿に集まっていた群衆から驚きの声が漏れていた。
「アリサ様ですか、謝罪は一応受け入れます、少しお話しましょうか?
中へどうぞ。」
「ありがとうございます、供はいりません私一人で参ります。」
アリサは護衛と侍女に待つように指示をだす。
「姫様!なりません!お一人など危険です!」
「謝罪に向かうのにぞろぞろト行けば相手に失礼です。
そもそも兄リスクが危害を加えようとしたのです。
護衛を連れていけば心象も悪いでしょう。
では、待たせる訳にもいきません。
いいですか、何があっても取り乱す事無く事態を見守るように、貴方達の振る舞いが我が国の威信に繋がると心得なさい。」
アリサは護衛達に言い残すと一礼して駅の中へと入って行く、凛としたその所作は第一王女の気品を感じる物であった。
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