第66話 幕引きをはかる

「結局、あの王子は何だったんだ?」

俺の所を訪ねて来たマルコに状況を確認していた。

「何がしたかったのかわからないがゴウあの場から帰ったのは悪手ではないのか?」

「生憎、俺は女性を人に捧げる趣味は無くてな。

仮に王様の命令だったとしても同じことをしたさ。」

「はぁ、まったく、お前は・・・

いや、確かにリスク王子に非があるのはわかるのだが。」

「あとは王様次第かな?

もし王様がリスクを庇い俺に何か強制するなら、俺はこの国を捨ててでも別の場所に移るよ。」

「待てゴウ、陛下にそんなつもりは無い。

リスク殿下は失礼な行為があったが決して国としての判断では無い、一部を見て決めるような事は止めて欲しい。」

マルコはゴウから出た言葉に驚き、引き止める言葉をかける。


「マルコもいるから安易に国を出たりしないよ、だけどそれは安全に暮らせるという前提があっての事だ。

だからこそ、王様の判断が悪いなら俺は出ていくしか無い。」

ゴウの言葉にマルコは背筋の寒い思いをするのであった。


「陛下にお目通りが叶い感謝致します。」

ゴウとの面会を終えたマルコは再びクルトの下に戻っていた。

「マルコ、ゴウは何と言っていた?」

「おそれながら、ゴウは陛下のご采配次第で国を出ると言っておりました。」

「なんと!それはなんとしても阻止せねばならん!古の魔法使いに見捨てられたなど、ご先祖様に顔向け出来ん!」

「ですが、安全に暮らせるのなら国を出ないとも言っておりました。

全ては陛下の御心のままに。」

「ふぅ、それならば大丈夫であろう。リスクには謝罪をするように申し渡した、明日にでも謝罪に向かわせよう。」

「リスク殿下が謝罪するのですか?」

「そうだ、王命をくだしたからな、誠心誠意謝罪することでゴウの怒りもおさまると信じよう。」

クルトは謝罪に伴い今回の迷惑料なども準備しており、リスクの謝罪とともに迷惑料を渡すつもりであった。

これにより、素早い幕引きをはかろうという思惑だったのだ・・・



「くそっ!この私が平民に謝罪だと!!」

自室に帰ったリスクは荒れていた、王家に生まれてこの方人に頭を下げた事など一度も無い、それを何処の誰かもわからぬ平民にさげるなどあり得ない、いやあってはならないのだ。


だが父である王が王命としてまで命じてきた以上、頭を下げなければ王命に逆らう反逆者になってしまう、それがわかるために自室で物に当たって自身を慰めているのだ。


翌日、苛立ちを抱えたまま駅に向かうのであった・・・

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