第60話 グラン王子の来訪

俺達の所にマルコがやって来る。

「ゴウ、城に上がる日が決まったぞ。」

「いつなんだ?」

「10日後だ、だがその前にお忍びでグラン王子がこちらにお越しになられる。」

「グラン王子?」

「ゴウは知らないのか、グラン王子は第三王子なのだが、聡明な御方であり、様々な国政にも知見をお持ちになられている、今回の登城にあたり一度駅を見てみたいとの事だった。」

「なるほど、接待をしろということか?」

「まあ、平たく言えばそうだな、だが後ろ盾になって貰えれば心強い御方だ、くれぐれも粗相の無いように頼みたい。」

「後ろ盾とかどうでもいいけど、マルコ的には無視できない相手のようだね、わかった、駅の説明と食事の準備をしてもてなすよ、たぶん気に入ってくれると思うけど。」

「すまないな、色々と頼んでばかりだ。」

「いいって事よ、それよりグラン王子はいつ来るの?」

「明日にでも来ると言っていたが・・・」

「わかった、準備しておくよ。」


俺はグラン王子の来訪を待つことになる。

「お前がゴウという魔法使いか?」

「魔法使いかどうかはわかりませんがゴウにございます、本日はお越し頂き光栄にございます。」

「見え透いた世辞はいい、それより中に案内せよ、駅、鉄道について詳しく聞きたい。」

「かしこまりました、では会議室の方にご案内致します。」

俺はホテルの宴会場でもある桐の間に案内する、ここはミーティングするには充分な広さであり、見た目も王子を迎えるに相応しい造りだと俺はおもっていた。


「こ、これは・・・見事な意匠であるな、金糸などが無いので一見華やかさにかけるようではあるが、この落ち着いた雰囲気は華やかさに無い良さがある、中々に良い部屋だな。」

「お褒め頂き光栄にございます。

こちらの部屋にて鉄道、駅についてのご説明をさせて頂きます。

グラン殿下お飲み物は何になされますか?」

「なに?」

「失礼ながら私はグラン殿下の好みを知りません、紅茶、コーヒー、お茶にジュース、様々な物がございます、お好きな物をお選びください。」

「私に選ばせるか、それも一興だな。

ふむ・・・ならば紅茶を頼もう。

皆、それぞれ好きな物を頼むが良い。」

グランの言葉には本当に色々な物が用意されているのかという確認の意味もあった。


俺の代わりにミユキが連れの方々の注文を聞いてくれ、すぐに用意される。


「早いな、だが私は紅茶には少々うるさいぞ。」

「殿下のおくちに合うかはわかりませぬが、私共でご用意出来る最上の物をご用意致しました。」

「まあ、そうであろうな・・・

なっ!」

グランは紅茶の香りとその味わいに驚く、キレのある渋みと蜂蜜のような甘さ、ここまで洗練された味わいの物は王宮にあるかすら怪しい物がある。


「ゴウ、これは何処の茶葉だ?」

「フォートナム&メイソンの茶葉にございます。」

「フォートナム&メイソン?聞いたことが無いな?」

「私がいた地域では王家の方々が飲まれていると聞いたことがございます。」

「ふむ、つまり王家の茶ということか?」

「そこまでいうと不遜になるかも知れませんが、私が知る限り最上級の物だと思っております。」

「確かにこれは最上級の物である!

素晴らしい味わいであったぞ!」

「お褒め預かり光栄にございます。」

グランは大満足しているのであった。


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