第51話 港とアライ駅

「そんなに驚く事か?」

「何を言っている、そりゃ驚くさ。

海にも魔物がいるんだ、船を守る術も少ないから、遭遇したら船底をやられて終わりだぞ。」


「そうか、でも俺の船なら魔物の攻撃に耐えれるかな。」

「確かにお前のチカラなら・・・」

マルコはゴウのチカラを考えていた、確かに魔物が蔓延る山林も関係なく走る鉄道である、船も同じ事はあり得ると。


「ゴウがいれば世界が広がるな!」

「その為のチカラだからな。」

俺はあらためてこのチカラをくれたサファに感謝するのだった。


一方、アライの町に駅が出来た為に鉄道の開通を待ちわびる者達がいた。

「まったくいつになったら駅に入れるんだ。」

その中でもアライにほど近い領地を治めるタイラー伯爵は馴染みの商人トモスミを呼び出し質問をしていた。


「申し訳ありません、アレス伯爵の嫡男ローグに資金を渡したもののローグが失脚してしまい、交渉出来なくなりました。」

「町の者を始め、我が妻も駅の開通を待ち望んでおる、何とかしろ。」


「タイラー伯爵様、何時の間にご結婚なされたのですか?

知らぬ事とは言え失礼いたしました。

あとで祝いの品を贈りますのでどうかお納めを。」

タイラー伯爵は40を過ぎても独身でいたのだが、偶然出会った女性に一目惚れした結果、1ヶ月の猛アプローチの結果、何とか結婚へとこぎつけたばかりであった。

「トモスミが知らぬのも仕方無い、式は後日行う予定だ。

その際は声をかけよう。」

「御目出度い事にございます。

これでタイラー伯爵領は安泰にございます。」

「うむ。家臣達も安堵したようであるからな。」

タイラーは満足気に語る。


「して、御相手は何処の御令嬢なのでしょうか?」

「クラ侯爵の養女だ、名をユメカという。」

「クラ侯爵様の養女?」

「知らぬのも無理は無い、なにせ私が妻に箔をつけるためにクラ侯爵に願い事出たのだ。」

「それほどまでの御寵愛ですか。」

「うむ、あれほどの女性は他におらん!」

「改めましておめでとうございます。」

トモスミは再度祝いの言葉を口にする。


商人として領主の血筋が安泰な事は喜ばしい事である、ましてやタイラーは長年問題無く領地を治めている、トモスミとしては今後も良い商いをする為にもタイラー伯爵家には安泰であって欲しいと願っていた。


「うむ、そうだトモスミ、ユメカの為にドレスを作ってもらいたい、頼めるか?」

「お任せあれ、王都一のデザイナーに伝手がございます、すぐに注文致しましょう。」

「任せる、今後も色々注文すると思うからな、良き物を準備してくれ。」

「かしこまりました。」

年老いて恋をすると燃え上がると言うが、タイラーの喜びようは人一倍であった。


その後トモスミはユメカの為に様々な品を用意するのだった。

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