第41話 権利

「お前は確か、港町アライの大商人、トモスミか。」

「はい、お見知りくださり光栄です。」

「お前が希望するのはアライまでの路線か?」

「はい、線路が繋がれば新たな商機も生まれます、金貨五千枚なら充分に元を取れると考えております。

ただ私が出費するにあたり多少特約が欲しい所ではありますな。」

「ふむ、確かに金を出すのに他者と同じじゃ割に合わぬな、言ってみろ。」

「我が商会の優先搭乗をお願いしたい。」

「優先搭乗?」

「はい、我が商会が荷物を乗せるにあたり優先していただきたいのです。」

「その為に五千枚の金貨を出すというのか?」

「はい、充分に価値があると考えております。」

「良かろう、このローグの名において認めるとしよう。」

「いえ、この件はアレス伯爵、ポーロ様の御署名を頂きたく存じます。」

「なんだと!俺の名だと不服というのか!」

「金貨五千枚からの商談になります、御当主様の署名は当然に思えます。」

「わかった、父上に伝えておこう!

トモスミ、金の用意を忘れるな!」

「はい、契約書に御署名をいただければ直ぐ様ご用意致します。」

「ふん!面白くない!」

ローグは気分を害し部屋に帰っていく・・・


一方、トモスミの提案を聞いた大商人達は優先搭乗の権利を大きくみる。

「つまり順番を待たなくて良くなるのか、大荷物も運べるなら新たな商機も。」

現状ゴウは貨物に対して積極的に管理をしていない、予約は早い者勝ち状態であり、各駅の領主の要請があれば優先するぐらいの扱いであった。

その為、自由に載せる事が出来るのならとローグの元に契約書を持って訪ねてくる商人が増えていく。


「これは凄いな・・・」

挨拶とばかりにローグに対して手土産を持ってくる者も多々おり、ローグの懐は一気に温かくなる、その上優先権を認める嶽で多額の資金がアレス領に入ってくる、この資金があればアレス領に精強な騎士団を作り、自ら戦史に名を連ねる活躍も出来るのではないか・・・

幼き頃に見ていた英雄になる夢を再び抱き始める・・・


ローグはマルコを呼び付ける事にする。

「マルコ!お前は今日より鉄道から手を引け!今後は私が管理する!」

ローグは最初に鉄道の権利を自分の物にすることから始める、仮に父ポーロが優先権を認めずとも鉄道の権利を持っていれば自由にすることが可能だろうと。


「兄上、何を言ってるんですか?そんな事を出来るはずが無いでしょう。」

「マルコ、鉄道を広げる事が出来たのはアレス伯爵家の名が合っての事だろう!

故にその権利はアレス伯爵にあり、以後私が管理すると言っているんだ!」

「それは無茶な話です、そもそも鉄道は私とゴウの二人の経営になっております、アレス伯爵家の物ではありません。」

「ならば命じる、鉄道をアレス伯爵家の名において徴収する。」

「なっ!そんな無体な命令がありますか!!」

「黙れ!!これは次期当主である、俺の命令だ!お前は黙って従え!おい、マルコを部屋に監禁しておけ。」

ローグはマルコを兵士に命じて監禁する。

「兄上!何を考えているんですか!!

おい、離せ!」

マルコが抵抗するものの兵士達はマルコを監禁する。


「おい、ゴウという男を連れてこい、こいつには脱税の疑惑がある、その罪によって鉄道はアレス伯爵家が徴収することにする。」

「はっ!!」

兵士達はすぐに駅に向かい管理室を取り囲む。


「ゴウ!出てこい!!」

「何でしょう?」

俺が扉から出ると鎧姿の物々しい兵士達が俺を逃さまいと取り囲む。


「これはなんの騒ぎですか?」

「お前には脱税の容疑がかかっている、すみやかに縛につけ!」

「脱税も何も経営についてはマルコ、アレス伯爵家の次男殿が行っています、そちらに確認を。」

「黙れ!これは命令である、本日今この時をおいてこの鉄道施設はアレス伯爵家の所有物となった!

お前はつべこべ言わず大人しく捕まれば良いんだ!」

「・・・はぁ、結局こうなるのか、マルコはどうしていますか?」

「そんなの関係無いだろ!」

「マルコがこんな真似をするとは思えない、今日この時をおいて駅の使用は中止とする、再びマルコが俺の所に話をしに来るまで鉄道及び、駅に入ることは出来ない!

この事をアレス伯爵によく伝えろ!」

「お前は何を?」

「駅構内に俺とアヤカ、ミユキ以外の立ち入りを認めない。」

俺が命じると俺達三人以外は全員外に出される。


「ど、どうなっているんだ!」

「ちょっと、もうすぐで買える所だったのよ!」

「何で俺達が外に!!」

外からは混乱を起こしている声が響いていた。


「ミユキさん、アヤカちゃん、聞いていた通りどうやらここにいられないみたいだ、拠点を別の町に移そうと思うけど二人はどうする?」

「私はついて行きます。」

「私もです、いきなり取り上げようとする人達とは一緒にいたいと思いませんから。」

「そうか、それじゃ別の町に移ろうか。」

俺は別にアレスにこだわるつもりは無い、駅に住むならここでは無くても良いのだから。


「そうだ、次は海の見える所にしようか。」

俺は次の拠点を探すのであった・・・

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