第39話 買えない
「ミユキ、売店の物を持ってこれないってどういう事?」
「ごめんリエ、ゴウさんを傷つけたリエに便宜をはかるのは難しいのよ。」
ミユキは心苦しいものの、アヤカの言った言葉が胸に刺さっており、次の日からリエに物を渡せなくなっていた。
「ミユキ、友達でしょ!お願い、お菓子、ううん!お弁当!おにぎりでもいいから!」
無いと思っていれば耐える事も出来たかも知れない、だが目の前で売られており、一度食べてしまったのだ、知ってしまった以上、再び無くなるのは耐え難い事であった。
「・・・ごめんね。」
ミユキも心苦しさからリエに会いづらくなるのであった。
「これもすべてあの男が悪いのよ・・・」
リエは日本食に飢えるのだが、打開策はすぐに見つかる、自分で買えないなら人を雇って買いに行かせばいいのだ。
リエは売店に買い物に行かせてそれを買い取る作戦に出るのだが、当然高い値段で買うことになる。
売店は高く無い値段を付けているとはいえ人を挟めば必然的に高くなる、そして高くても買いたい者が多くいる為、転売値段は日々高騰していた。
「なんでおにぎりが、銅貨十枚になってるのよ!元々二枚って聞くわよ!」
「嫌なら買わなくていいさ、他にも欲しがる奴は多くいるからな。」
「くっ!今は持ち合わせがないわ!八枚でどう?」
「それなら他をあたりな、シーマヨは人気だから銅貨十二でも買うやつはいるんだ。」
リエは転売屋からも足下を見られ購入出来なくなっていた・・・
「お金を稼がないと駄目ね。」
リエが持っている金はリエを拐おうとした者達から奪った金であるがそれもそう多くは無い、とはいえ、身元のわからないリエを雇おうとする者は多くなければ、日本食を食べるにはそれなりの稼ぎが必要である、安い賃金で働くなどリエは出来なかった。
「冒険者ギルド?」
そんなおり、魔物を狩りその素材により、稼ぐやり方を知る。
「なるほど、よくある方法だけどこれが手っ取り早くわね。」
リエは迷うこと無く冒険者ギルドに登録して魔物を狩り始める。
ジョブの効果もあり、町近郊では問題無く狩りを行うことが出来ていたが、町の近郊で狩れる魔物は多く入荷され安値である、解体も出来ないリエが持ち込む獲物は魔物を狩ったという国からの報酬金ぐらいであり、魔物素材としての値段はほとんどついていない為に稼ぎとしては多くは無かった、
宿代など必要経費を抜けば何とかおにぎりを少し買えるぐらいの稼ぎであった・・・
そんなおり、魔物に襲われている男を見かける。
「来るな!来るんじゃない!」
男は商人のようだがナイフを振り回し自分に群がる角の生えた兎の魔物を近づけないようにしていた。
リエは少し離れた所で男が魔物に襲われている様子を助けるでも無く眺めていた。
「おい!そこの人!助けてくれよ!殺されてしまう!!」
男はリエを見つけ助けを求めるがリエはただ眺めている。
「おい、聞こえないのか!!」
「あんた似てるわね?」
「はぁ?何を言ってんだ!助けてくれよ!」
「ゴウに似てるわね?」
男は少しだけ雰囲気がゴウに似ていた。
「ゴウ?誰のことだ?」
「あはは、良いざまね、ほら魔物に喰われるわよ。」
「くそっ!なんだよ!ぐわっ!」
男の足に兎が噛みつき男は悲鳴を上げる、それと同時に身体を引き倒され、兎達は無慈悲に群がり男の身体に噛みついていく。
「ぎゃあああぁぁぁ!!いてぇ!いてぇよぉ!助けてくれぇーーーー!!」
男の叫びが響くがリエは近づきもしない。
「ああ、いいわ、きっとこうするのが正解なのよ。」
リエは辿り着いた答えが正解とばかりに嬉しそうな表情で死にゆく男を眺めていたのだった・・・
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