第36話 日本の味
翌朝、始発前にマルコは気まずそうにやって来る。
「やっぱり来た。」
俺はやって来ると思っていた、王都まで鉄道を使わないと1週間程かかると聞いていた、汽車を使えば最寄りから王都までを含めて1日もしくは2日で着くのだ、急ぐなら間違い無く汽車を使うべきである。
「知ってるなら言ってくれよ。」
「いや、他の手段があるのかと思ってね。」
「無いよ!」
「そんなにハッキリ言うなよ。
まあ始発便にお前が乗れるように1両足しておいた、それと弁当と飲み物だ、売店は混むからな用意しておいたよ。」
「ありがとう、でもなここまで気が利くなら昨日言ってくれよ・・・」
マルコはジト目で俺を見てくる。
「さあ、マルコ始発に遅れないように早く乗るんだ!」
「わかったけど、帰ったら話し合いだからな!」
「へいへい〜」
俺は軽い返事でマルコを見送るのだった。
駅に入れず、周辺をうろつくしか無いリエは売店で売り出されている日本の食べ物を遠くから眺める事しか出来なかった。
「あれはコーラ!それにおにぎりもある、あーもっと店内がみたいのに!」
リエは売店に入って商品をみたいがどうやっても入る事が出来ない。
「あーなんで入れないのよ!!」
リエが壁を蹴っている所にミユキがやって来る。
「リエ何をしてるの?」
「ミユキ〜ねえあれはなに?なんで日本の商品があるの?」
「あれはゴウさんのチカラかな、ゴウさん駅の売店で売っている物を呼び出すことができるみたい。」
「なにそれ!そんなチカラ貰いすぎでしょ!!」
「私達にチカラをくれた神様と違うから、私達はついて行かなかったけど、ゴウさんの対応をしてくれた神様は誠意のある方だったんだと思うわ。」
「ずるい!私も日本の商品食べたい!」
「ちょっと待って、いくつか持ってきてあげるから。」
「ほんと?ありがとうミユキ!やっぱり持つべきものは親友だね。」
「はいはい、大人しくしててよね。」
ミユキはリビングにおいてある予備おき品を持っていこうとする。
それをアヤカは後ろから見ていた・・・
「はいリエ、お弁当とお菓子、あと紅茶を持ってきたわ。」
「あ、あ・・・懐かしい、これよこの味よ!!」
リエは涙を流して食べていく、この町には醤油も無ければ香辛料も高くて少なくとも庶民が食べる味付けは薄味が多い、豊食の日本から来た者の多くはその食文化に苦しんでいるのだ。
再び味わえたリエにとってそれは幸福であり、不幸でもあった・・・
「ミユキさん、ゴウさんの敵にほどこすなんて良くないと思います。」
リエと話したあと部屋に帰ってくるとアヤカが険しい表情でミユキに詰め寄ってくる。
「えっ、敵って・・・」
「敵でしょ?ゴウさんを傷つけた事に変わりはありませんから。
ゴウさんは優しいからミユキさんが会う事を許してくれていますが、食べ物まで与えるのはどうなんでしょう?」
「で、でもリエは駅に入れないから買うことも出来ないのよ、日本食を食べれない苦しさはアヤカちゃんもわかっているでしょ。」
「はい、でも、リエさんが駅に入れないのはゴウさんに危害を、いえゴウさんを殺そうとしたからです。
本来ならミユキさんが会うことも制限されてもおかしくないのに、それが許されているからってなんでもしていいとはならないのでは無いでしょうか?」
アヤカの言う正論にミユキは返す言葉が無い、リエがゴウを殺そうとしたことは言い訳の出来ない事実であり、いくら反省してると言っても、謝罪すら拒否されている今の状態である、ゴウの資産ともいえる商品を横流しすることが良く無い事は理解出来た・・・
次に会うときからリエに渡す事は出来なくなる、それがリエの苦しみの始まりであったのだった・・・
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