第35話 お菓子の売出し

リエとの一悶着のあと、リエの事はミユキ任せ、俺は鉄道の運営に精を出す事にする、仕事に集中している方が些細な事を気にしなくてすむ為でもあった。

「ゴウさん、売店の商品を売り出してみませんか?」

ふとアヤカから提案があった。

「一応、ボールペンは売り出しているんだけど・・・」

「それだけじゃなくて、お弁当とかお菓子とかデザートとかも売り出しませんか?」

「まあ、スペースはあるしいいけど、ちょっと高いけど売れるかな?」

弁当、お菓子などほ電車賃と違い値段を操作できない、現在電車賃の3倍から5倍の値段になる、売れるかどうかが心配になるのだが・・・


「これは私のポテトチップスだ!」

「離して!フルーツサンドを買いたいの!」

販売して暫くすると多くの人が詰め掛ける事態となる。

「アヤカちゃん、凄い事になったね。」

「はい、絶対に売れると思っていました。」

購入しているのは一般人より身形の良い事から、商人もしくは貴族の関係者と思われる、ただ誰が相手でも売店のシステムは変わらない、レジでお金を支払うまで食べることもましてや持って帰る事も出来ない、大量に購入しようとした人達が3台のレジに詰め掛ける様子はまるで地獄絵図のようだった。


そして、この騒ぎは王都に行っていたアレス家当主ポーロにも影響が出ていた。


「アレス伯爵、少しかまわないか?」

「クルト陛下この私に何かご要件でございましょうか?」

「うむ、娘がなアレス伯爵領で流行っているお菓子を気にしていてな、今度城にも送ってもらえないだろうか?」

クルト国王から直々に声をかけられた事にポーロは感激を覚えていた。


「もちろんにございます、ただお恥ずかしながら私は流行りに疎く、流行っているお菓子というのを存じ上げ無く、何処で売っているかお教え願えないでしょうか?」

「アレス領の駅という所で売っているとか言っておったな。」

「駅にございますか、あそこは私の息子に管理させておりますのですぐに献上できます。

すぐにお持ち致しましょう。」

「そうか、すまんな。

頼んだぞ。」

クルトは嬉しそうにポーロの肩を叩き自室に帰って行く。


ポーロはすぐに屋敷に帰りマルコに火急の伝令を送る。

「ゴウ、大変な事になった!」

父親からの火急の報せを受けたマルコは営業時間が終わり閉まっているにもかかわらず駅にやって来る。

「マルコどうしたんですか?」

「へ、陛下がクルト国王陛下が駅のお菓子を所望なされたんだ!」

「へぇー、そうなんですね。」

「なんだよその反応は、陛下が町のお菓子を所望するなどあり得ない事なんだぞ。」

「とは言ってもなぁ、あまりに上の人過ぎて想像がつかないよ、それよりお菓子だろ、何がいいかな?」

王都まで鉄道は通ってない、一番近くの駅からでも1日ぐらいかかると聞いていた、なので日持ちのしない物は除外する必要があるだろう。


「まあ、生系は避けてお土産品なら問題無いかな、マルコこのあたりでどうかな?ちょっと試食してくれよ。」

俺はお土産品から栗の入ったタルトとウェハースに砂糖とメイプルシュガーを乗せて焼いた物を選択する。

「そうだな、陛下に献上する前に味を確認しておかないと。」

「ミユキさん、お茶の用意をしてくれるかな?」

俺はタルトとウェハースを茶菓子として出す。


「こ、これは!!」

「どうかな?他にもあるけどそんなに多くいきなり献上することも無いかなと思うんだけど。」

「たしかにそれは不敬にあたるかも知れない。

それにこの美味しさなら問題にならないだろう。

・・・ゴウ、今他にもあるって言ったか?」

「あるよ、かなりの数があるから店舗には出し切れないな。

それに日持ちの関係もあるから、生物は避けるしか無いからね。」

「・・・最近、汽車に乗る訳でも無い人が駅に列をなしているのはこの為か。」

「買い物に来ている人は多いね。」

「まあいい、それより早く陛下に献上しなくてはいけないな、ゴウ貰っていくぞ。」

「おう、持って行って。」

マルコは慌てて持って行くのだった。

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