第20話 アレス家

「父上!!相談があります!」

屋敷に帰ったマルコは父上であるポーロ伯爵の執務室に駆け込む。

「騒々しいぞ、マルコ。

貴族たる者、落ち着きを持ってだな。」

「それどころではありません!鉄道です!王都まで鉄道を作ることが出来るのです!」

「落ち着けと言っている、そもそもなんの話だ?」

マルコはゴウとの話をポーロにも説明する。


「にわかに信じられぬが・・・だがマーサやエドモンドに出来た鉄道も誰が作ったかわからぬ程の早さで建設されたと聞く、マルコの話も嘘と言うのは簡単ではあるが、誠だった場合大きな利益を失う事になるな。」

「父上、ゴウが嘘をつくような男には見えませんでした、どうかこのマルコを信じてください。」

「わかった、この件についてはマルコに任せよう、他家との交渉には家名を使っても構わん。」

「ありがとうございます。」

マルコは深く頭を下げる。


「マルコ、鉄道なんて噂話を信じているとはな・・・」

マルコが執務室から出た所で嫡男のローグがマルコに声をかける。


「兄上、噂話ではありません、現にアレスには駅が存在してましたし、汽車と呼ばれる乗り物も来訪しました、これはアレス伯爵家にとって大きな機会なのです。」

「跡を継がぬ奴が家の名を語るな、いくら父上が認めたとはいえ、このローグは認めておらぬからな、よく覚えておくことだ。」

「兄上・・・」

ローグは言うだけ言って立ち去る、そこには兄弟の確執があったのだった。


ポーロから許可を貰ったマルコはアレス伯爵家の縁者達に声をかけまずはそこまで線路を通す事にする、本家からの正式な依頼に断れない各分家達はその思いは別にして鉄道の敷設を受けていたのだが・・・

「マルコ、このプラタで取れる銀をポルトの港まで運ぶ貨物列車を運行する?」

「貨物列車?」

「そう鉱石は重いからね、乗客とは別で運行しても良いかなと。」

「なあ、もしかして人だけじゃなく物も大量に運べるのか?」

「何を今更、人も物も運べるよ、ただ人と分けた方が効率が良さそうだからさ。」

「わかった、ゴウの負担にならないのなら任せるよ。」

「了解。」


俺とマルコは鉄道を敷設しつつ各町の経済状況を考慮しながらダイヤを検討していた、その為、町の経済は格段に良くなり、当初無理矢理押し付けられた分家からも礼を言われる事が多くなっていく。


そして、他家においても鉄道の敷設を希望する町が増えていく、俺は別段断る事無く土地さえ用意してくれたら鉄道を敷設する、鉄道網はアレスを中心に拡がっていくのであった。

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