第18話 貴族の子弟
「は、伯爵様の御子息なのですか?」
「まあな、あっ、でもそれほど気にしなくていい、家督は兄が継ぐ事が決まっているし、貴族の子弟というだけでたいした権力は無い。」
「いえ、それでも・・・」
「気にするやつだな、ならばこうしよう、ゴウ紙と書くものはあるか?」
「えーと、こちらに。」
俺はメモ用紙とボールペンをマルコに渡す。
「上等な紙にこれはなんだ?」
マルコは見たことも無い物に驚いている。
「これはボールペンといいまして、インクが中に入っておりそのまま書ける物です。」
「ふむ・・・素晴らしい!これは画期的だ!」
マルコは少し試し書きをして感動していた。
「えーと、よろしければ差し上げます。
たいした物では無いのが恐縮ですが。」
マルコが楽しそうに驚いてくれているので俺は喜んでくれるならと譲る事を提案する。
「いいのか!!これ程の物を貰っても!」
「ええ、いくらでもありますし、それほど高い物でもありませんから。」
「いや、これだけでも一財産作れる程の物だ、ゴウ代わりに何か欲しい物とかは無いのか?」
「欲しい物ですか?」
「そうだ、何でもいいぞ。」
「うーん、そうですね・・・
それなら町に入った際に案内をつけてもらえないでしょうか?
恥ずかしながら世間知らずでして、アルスの町について何も知らないのです。」
「わかった、すぐに手配しよう、それとこれを渡そう。」
マルコはメモ用紙に何か書いて俺に渡してくる。
そこにはマルコに対して失礼な発言があったとしても罪に問わないという宣誓がマルコ・アルスの名において宣言されていた。
「マルコ様、こちらは?」
「書いてある通りだ、ゴウが何を言っても私は家名に誓って罪には問わないと宣誓したんだ、今後は話し方に気を使わなくてもいいぞ。」
「いえいえ、そのような訳には・・・」
「大丈夫だ、私はゴウの事をもっと聞きたい、その為に身分を気にした話し方など邪魔なだけでは無いか、さあ試しにマルコと呼び捨てにしてくれ。」
「マルコ様それは・・・」
「マルコだ。」
マルコは俺をじっと見つめる・・・
「わかりました、マルコ。
でも、元々口が悪いから失礼だと思ったら言ってくれ。」
「それでいいんだゴウ、私はそんな些細な事を気にしたりしないからな。」
マルコは嬉しそうに俺の背中を軽く叩いてくるのであった。
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