第16話 破滅
「あら、何かしら?」
「鉄道の券売機が使えなくなったそうですね。」
「えっ、ゴウは何をしているのかしら。」
マーサに滞在して買い物をしている最中にニナは鉄道が止まった事を知る。
だがこの時点ではすぐに直すだろうと軽く考えていた・・・
「ニナ!これはどうなっているんだ!」
翌日になっても改善されない状況に、ニナはマーサ子爵に呼び出される。
「わかりません、管理している者はカリフ村にいるので私には何もわからないのです。」
「まったく折角街が栄えてきた所だというのに、こんな事になれば足が遠退く者も出るだろう!
このことをお前はどう考えているんだ!」
「どうと言われても・・・」
ニナに街の発展について聞かれてもまったくわからない、そもそもニナは勉学をした事も無いのだ、何を言われても答えようが無い。
「こうなった以上、この問題が解決するまでお前との婚姻は延期だ!」
「えっ!そんな・・・」
「当たり前だ!鉄道が無いお前になんの価値があると思っている!」
ニナはマーサ子爵から切り捨てられ屋敷からも追い出される事になる。
「何がどうなっているのよ!ゴウは何を考えているの!」
ニナは腹を立てながらもひとまず馬車を手配してカリフ村に戻る事にする。
「えっ、ゴウがいない?」
カリフ村に着いたニナはタラスからゴウがいなくなった事を聞かされる。
「そうだ・・・くそっ、あの野郎何処に行方を眩ませやがった、帰ってきたらただじゃおかねぇからな。」
タラスは怒りを滲ませるものの、わかっている行き先は森の中である、追いかけて行く事は容易ではなかった。
「森に・・・
そんなじゃあ、私の結婚はどうなるのよ!
子爵夫人になれるチャンスなのに!」
「そんな事より商人共が損害賠償を求めてきてやがる、こんなの払ったら破産してしまう。」
現在タラスのもとに様々な商会から鉄道が再開されない場合についての賠償請求が届いている、今は商会が再開されたあとの厚遇を要求する事がメインではあるが、その反面再開出来なかった場合の損害賠償額は恐ろしい値段が設定されていた。
「こんなの払う必要無いじゃない。」
「それがだな・・・」
タラスが直接契約を交わした商会の中には契約書に不履行について記述を多数盛り込んだ契約があり、現在届く要求が理不尽と言い切るには難しい所もあったのだ・・・
「どうしよう・・・」
親子二人、顔を見合わせる。
ここに来て自分達の栄華がゴウによる物だと認識したのだ。
「・・・ニナ、馬車で逃げるぞ。」
タラスは見栄の為に購入した馬車で逃げる事を考えていた。
「お父さん!逃げてどうするのよ!」
「幸い手元に金は沢山あるんだ、この金で商人が追ってこれない地域に行って生活すれば良いんだよ。」
「・・・そうね、それしか無いのね。」
ニナも現状を飲み込み逃げる覚悟を決める。
「決まったならさっさと準備しよう、今夜に出発するぞ。」
その日の夜、カリフ村から1台の馬車が人の目から逃げるように走り去って行くのだった。
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