第15話 一区切り

涙を流した分だけ心が軽くなっている気がする。

誰にも見られること無く泣き続けた俺は次第に心が軽くなっていく。


「そもそも俺は旅行をしたかったんだ、一処に留まり続ける必要なんて無かった。」

俺がサファに貰った能力は駅を作り走らせる事じゃ無い、世界を旅するのに必要な物をもらったのだ。

俺は自分の能力確認画面を見ながら、ふと動き続ける電車の動きを見る。

「これが動く必要なんて無いよな。」

俺はまず券売機を利用停止にして新たな購入を出来なくする。

そして、誰も乗れなくなった所で電車を消す。

残されたのは駅と路線だけであった。


「消してしまった・・・」

今更電車が無くなったら困る人が出てくるのはわかっていた、だが自分を切り捨てたタラスとニナの言葉を思い浮かべると許せる物では無かった、ささやかとは言えないが俺なりの復讐を果たしていた。


「はぁ、これからどうしようか。」 

俺は森の中にある駅で一人の時間を過ごすのであった。


「おい、どうなっているんだ!!」

タラスの所には切符を買えなくなった事により、多数の人が押し掛けて来ていた。

「ま、待ってください、ただいま原因を確認中です!すぐに、すぐに直します!!」

タラスはひとまず時間を貰い、ゴウを探しに行く。


「まったくアイツは何をしているんだ、管理をするのがアイツの仕事だろ!」

タラスはゴウが家として使っている駅の管理室に行くのだがそこにゴウの姿は無い。

「くそっ!何処にいるんだ!使えない奴め!!」

タラスは元からいた村人達に声をかけゴウの行方を探そうとするがその中でモンシから質問が帰ってくる。


「タラス村長、ニナが結婚するからゴウが身を引いたんじゃないか?

わざわざ探さなくても・・・」

モンシの言葉に頷く者も何人かいる、

「ニナの結婚とゴウの仕事放棄は違う話だ!」

「いや、違わないだろ?」

「なんだと!」

「そもそもゴウが働いていたのはニナと結婚するからその責任を取って村の為に働いていたはずだろ、結婚しないなら働く理由なんて無いじゃないか。」

「そんな事は無い!ゴウが働いていた事に対して給料は払っている、男なら仕事を投げ出すなと言語道断だ!」

タラスの言葉に村人達は冷たい眼を向ける。


「何だその眼は!」

「村長、鉄道は全てゴウが作って運用してたんだろ、なんで村長から給料を貰う必要があるんだよ。」

「そんな事は・・・」

「あんたがそんな態度だからゴウは出ていったんじゃないか?」

「ええい!今はそんな事はどうでもいい!

ゴウを探せ!!」

「あ、あの、ゴウとは限らないのですけど、券売機が停止する前に森に向かって1台鉄道が走っていきました、もしかしたらゴウが乗っていたのかも。」

アルファが気付いた事を言う。


「なんで止めないんだ!まったくお前達は使えないな!」

「「・・・」」

アルファとモンシは冷たい眼をタラスに向ける。


「なんだその眼は!」

「いや、だってよ、いつからあんたがそこまで偉くなった。」

「なに?」

「村長って言っても村の代表ってだけで、やる事無かったのがこの村だろ、それなのに最近のタラスは俺達に命令ばかりして何様だよ。」

「何だと!誰のお陰でこの村が発展したと思っているんだ!」


「そんなのゴウのお陰だろ?

鉄道を作ったのも、その運用をしていたのもゴウじゃないか、タラス、あんたが何をやったって言うんだ。」

モンシの言葉は真を得ていた、ニナがゴウと結婚するなら、タラスの言葉も間違いではないがゴウと縁を切った・・・切られた以上タラスが村の為に発展させたと言う言葉は無意味なものとかしていた。


「タラス村長、どうするんです!村に滞在していた人達が帰らせろと騒いでいます!」

話し合いの最中でもひっきりなしに悲鳴混じりの声が届いてくる。


「うるさい、ゴウ、ゴウがいればすぐに片付く!さっさと探せ!」

タラスが騒ぎ立てても魔物が多く生息する森に入ろうとする者はいなかった・・・

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