第14話 別れ

「さて、もういいだろう。」

俺は駅の私室にあった私物を袋に纏め出ていく準備をする。

これまでニナと寝てしまった責任を取るために、尽くしてきたつもりだったが向こうが自分を捨てるというならここで終わりでいいだろう。


俺は村を出る前に一度タラスの家に向う。

「タラスさん・・・」

「おいゴウ!お前は何処でサボってやがった!

駅でクレームが多数上がってきているじゃねえか!

さっさと行って対応しろ!」

「タラスさん、随分変わってしまいましたね。」

「なんの話だ?」

「自分が村に来た時は優しい人だと思っていたのですが・・・」

「何を分けのわからない事を言ってる!

いいか!お前が今するべき事は駅に行ってクレーム処理をすることだ、ここで駄弁っている暇なんて無い!」

「・・・そうですか、それでは。」

俺は頭を下げ、家をあとにする。

「おい!走っていけ!このグズがぁ!!

まったく売上げが下がったらどうするつもりだ!」

俺の瞳には涙が浮かんでいた、村に着いた時は貧しい村ではあったが温もりを感じられた、だが栄えれば栄える程、タラスやニナから人の温かさが消え、金を求める者に変わっていった、その事が無性に悲しく思えたのだった・・・


「暫く一人でいようか・・・」

俺は人に会うことに疲れを覚えていた、紛いなりにも失恋と呼べるのだろうか、ニナの事やタラスの事が煩わしく感じるようになっていた。


俺は以前敷設したまま使っていなかったアルス方面へ向う、途中の森の中に新たに駅を作り、そこに向う。


「静かだな・・・」

俺は静寂の時間を楽しんでいた、ここ数ヶ月理不尽なクレーム対応や貴族の横暴に頭を下げ続けていた、次から次に起こる問題に頭を悩ませる日々を続けていたのだがもうこれで気にする事は無い。


俺はあらためて自分のチカラを確認する。

「あれ、駅がバージョンアップ出来るようになっている。」

俺は今いる誰もいない駅をバージョンアップする、すると駅に売店が付属された。

「売店か・・・」

俺は取扱われている商品を見て懐かしさに涙がこぼれてくる。


「いけないな、どうも心が弱っている、すぐに涙が出てしまう・・・」

俺は誰もいない駅で一人で涙を流すのであった。

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