第13話 人は変わる・・・
最近、ニナと会わない日が続いている、俺はダイヤの見直しや、苦情の対応に時間を取られているのだが、すれ違いの日々の中、ニナはマーサに行ったままもう1週間も帰っていない、村の人の目撃で無事なのはわかっているが少し寂しさを感じていた。
「タラスさん、ニナさんはまだ帰って来ていないのですか?」
「うん?ああ、そうだな、まあゴウが気にするような話ではない、それより増便は出来ないのか?」
「増便と言われても、もう結構ダイヤは一杯になってまして難しいかと。」
「ちっ、それなら代金の値上げだ、そうすればうちに入る金も増えるだろう。」
「いやいや、それをすると客足が遠のきますよ。
今のままでもカリフ村が栄えていっているのですからこれで良くないですか?」
「ちっ、使えんな・・・
まあいい、ゴウは駅に戻り働いておけ。」
タラスはいつの頃か傲慢になっていっており、ゴウの事を受け入れてくれた当初の優しい村長の面影は失われていた。
俺は駅に戻る最中に噂話を耳にする。
「なあ、聞いたか、ニナがマーサ子爵と結婚するそうだぞ。」
「えっ、ニナってゴウと結婚してたんじゃないのか?」
「そりゃあの時は限界村落になっていたからな、だが今や村長は金持ちになったから身元不明の男より、子爵様の妻の方が良いと判断したわけだ。
それにマーサ子爵としても鉄道を経営する村長と縁を持ちたいという事だろ。」
「ああ、そういえばニナはマーサに行ったきり帰って来てなかったな。」
「向こうで子爵とデートしている姿が目撃されているからな、ほぼほぼ決まりだろ。」
「なあ、その噂は本当か?」
俺は思わず噂をしていた二人に問いかける、彼らは昔から村にいた二人でアルファとモンシといい、俺とも面識が合ったのだ。
「ゴ、ゴウ!」
「お、俺は知らないからな、モンシお前が説明しろよ。」
「俺も言えねえよ!」
「モンシ、教えてくれないか?」
俺が問い詰めるとモンシは渋々ながら話し始める。
「言っておくが噂だからな!
俺が見たのはニナがマーサ子爵と買い物している姿だけだ、まあその後高そうな店で食事をしようとしてたみたいだが、それだけだ。
あとの事は噂話だ。」
「そうか、ありがとう。」
俺はモンシに礼を言い、そのままマーサに向う・・・
マーサに着いた俺は駅から出てニナが泊まっているはずの宿を訪ねる。
「ニナさんの関係者かい?それなら彼女に宿に泊まらないなら宿を引き払うか聞いてもらってもいいかい?」
「宿に泊まっていないんですか?」
「そうだよ、子爵様の御屋敷に呼ばれたまま宿に帰っていないのさ、まあ前金で貰っているから良いんだけど、使わないのに部屋を貸すのもねぇ・・・」
「そうですか、それは失礼しました、一度会って確認してみたいと思います。」
「頼んだよ。」
俺は宿をあとにしてマーサ子爵の屋敷を訪ねる。
「ニナ様に面会?
お前はいったい何処の誰だ?」
俺は門番に面会を求めるが不審な顔をされてしまう。
「カリフ村で鉄道を管理している者です。
ニナにゴウが来たとお伝えしてくれませんか?」
「ちょっと待て!」
門番は一度確認に向かったようだった。
「ニナ様が会うようだ、ついてこい。」
俺は門番に案内され応接室に案内される。
「ゴウ、お父さんに何かあったの?」
部屋に入るなりニナが質問してくる。
「いや、タラスさんは元気にしてたよ。」
「なに、それならなんで来たのよ。」
「いや、ニナとマーサ子爵が結婚するって噂を聞いてね、真実はどうなのかなと。」
「あー、それね。
そうよ私はマーサ子爵と結婚するの。
あっ、もしかしてゴウって私と結婚出来るなんて勘違いしてた?
あはは、そんなはず無いじゃない、ゴウ貴方は鏡で自分の姿を見たことある?
私と貴方じゃ釣り合うはずが無いでしょ?」
「・・・そうか、つまり俺は君の事を気にしなくても良いということか?」
「そうよ、私はマーサ子爵と幸せになるの、いい貴方と私には雇用者と使用人の関係しか無いの、言ってる意味はわかるわよね?」
ニナは俺との関係を雇用者と使用人とはっきり言い切った、紛いなりにも手を出してしまった責任はこれで果たしたと思ってもいいだろう。
「そうか、なら俺達の関係は終わりだな、元気でやれよ。」
「なに拗ねてるのよ!まったく使えない使用人ね!」
ニナが言葉を浴びせてくるがもういいだろう。
俺は屋敷をあとにして一度村に戻るのだった。
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