第11話 時は流れ・・・

村とエドモンド、マーサを結んで暫くが経つ、当初ラキが使い始めたのだが、他の商人もすぐにその利便性に気付き一気に利用者が増えて来ていた、村にも以前出ていった者達も帰ってきており、さらに現在各商会から雇われた人夫達が宿泊する為の施設が駅周辺に建てられて、人夫相手の商売を目論む者達も店を建てる動きを見せ、村は著しい発展を遂げていた。


「わはは、笑いが止まらん!様々な商人達がワシに挨拶をしてくるのだ!

この前まで門前払いをしていた奴らがだぞ!」

タラスは昼から酒を煽り、大笑いしている。 以前の寒村だった際、様々な商人に頭を下げ、村に商人を派遣してくれるように頼み込んでいたのだが、どの商人も利益が見込めないと相手にすらしてくれなかった、その為に村出身の商人に無理を言って善意のもとにほぼ利益の無い商売をお願いしていたのだが、

現在は状況が変わっていた、エドモンド、マーサを結んだ事により大きな商機が生まれた、多少手間がかかった所で1日輸送が早まるメリットを考えれば微々たる物である。


それに人の移動も活発になる、カリフ村で乗り換えるだけで3時間程でいけるようになった事により、個人的に移動する者も増えたのだ、マーサでは休日に港町に買い物に向う事がトレンドとなり、エドモンド山間のカリフやマーサで森林の空気を吸うことが新たな生活となって行くのだった。


「ねえ、ゴウ。これ似合うかしら?」

ニナはエドモンドで買った豪華な服を見せてくる。

「似合うと思うけど、それ来ていく所ある?」

ニナが見せてきたのはパーティドレスであり、発展しているとはいえカリフ村で着る機会があるようには思えなかった。


「ゴウ、私は大金持ちになったんですよ、これからどんなお誘いがいつあるかわかりません!それに備えて準備する必要があるんです。」

ニナの言う通り、チケットは軒並み完売しており、便数を増やしても対応が追いついていない。

村でありながら周囲への影響はかなり現れていた。


「まあ、無駄遣いも程々に・・・」

「もう無駄遣いじゃないです!私を磨く為に必要なんです。

あっ、いけない、マーサの美容室に行かないと。」

ニナは商人に紹介されたマーサの貴族御用達の美容室を愛用し始め美容に凝り始めていたのだ。

だが普通の人ならチケットは完売しており、前もっての予約を必要とするのだが・・・

「ゴウ、出かけるから準備してください。」

「はいはい。」

俺は次のマーサ行きの便の後ろに客車を一つ増やして、出掛けるニナに手を振るのだった。



「あはは、まるで貴族みたい。」

ニナは満員の電車の中で自分だけの車両に乗れる事に優越感を得ていた、そしてそれは自分が特権階級であるかのような錯覚を生み出していたのだ。


「あ、あの、こちらの車両には乗れないのですか?

急いでマーサに向かわないといけないのです!」

一人の女性が席に座っているニナに窓越しに声をかける。

「マーサに向かいたいならチケットを買ってください。」

「チケットは次の次の便になっているんです、でも急いでいるからお願いしているんです!どうかお願いします!」

「私にお願いされても困ります、この車両は私の為だけに使用人が用意したのです。

わかったのならご自分のチケットの便に乗ればいいじゃない。」

「空いてるなら乗せてくれてもいいじゃないですか。」

「何を勘違いなさっているのです?

ここは空いているんじゃないんです、私がいるのに相応しいスペースという物なんですよ。」

ニナは悔しそうにする女性を見ながら高笑いをするのだった。

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