第10話 商人案内
「さて、帰りますか。」
荷物とラキを追加で乗せ、俺達はカリフ村に帰る。
「凄い!なんですかこの早さは!」
「驚いてもらえて光栄です、この早さなら一時間で着くのも納得してもらえるでしょう?」
「たしかに荷馬車と比べて全然違う!ゴウさん、これは常時動かす事ができるのですか?」
「ええ、私が乗っている・・・
いや、私がダイヤ設定すれば自動で運行出来るのか。」
俺は頭の中にダイヤ設定方法が浮かんでくる、これを使えば一度訪れた駅と駅を結ぶダイヤを設定出来る仕組みになっている事がわかった。
「ラキさん、チケットさえあれば自由に移動することが出来そうですね。」
「す、すばらしい・・・
カリフ村にはパーシがある、日持ちはしなかったから輸送出来なかったがこれがあればもっと広い範囲にパーシを売りに行けるな。」
ラキの頭の中ではパーシを売った際に上がる売上がチラついていた。
「到着です!」
ニナは嬉しそうにラキに伝える。
「た、たしかにカリフ村だ、これは凄い・・・」
ラキは早い到着に目を丸くしていた。
「ラキさん、森の向こうのアルスにも行く事は出来るんですが・・・」
「森の向こうだって!森の中は凶悪な魔物の巣窟じゃないか!
そんなの無理だって!」
「この乗り物に乗っていれば魔物からの攻撃も大丈夫なんです。」
「ゴウさん、またそんな事を言って、前回たまたま上手くいっただけかもしれないんです、危ないからアルスに向かうのは止めましょう!」
俺の言葉を聞いてニナは止めてくる。
「たしかに凄い乗り物なのは認めるけど森を抜けるのはなぁ・・・」
ラキも命を捨てるつもりは無い、俺の言葉を信じる事は出来ないようだった。
「まあ、そこまで言うなら止めておきますけど、そうだラキさん、仮にですよマーサまでこれで行けるとしたら需要はありますか?」
「マーサまで行けるのか?」
「今は無理ですけど、行こうと思えば行けると思います。」
「それならばもっと商売の機会が広がる・・・
需要はあります!是非やってもらいたい!」
「まあ、今後の事もありますからこの事はタラスさんと相談してからになりますけど。」
「それなら私も話をさせてもらう!」
俺達は一度家に帰りタラスと話し合う。
「つまり村とエドモンドとマーサまでを結ぶ交通手段が出来るということか。」
タラスは朝出ていった俺達が昼過ぎにラキを連れて帰って来たことに驚いたあと、移動手段が本当の事だと理解することが出来たのだ、そのうえでこの移動手段が広がるという話に耳を傾けていた。
「エドモンド、マーサを結ぶ線路を結びますが一度この村で荷物の詰替えを行います、それにより荷運びの仕事が生まれ村に人が住むようになるのではないかと考えています。」
俺は計画の趣旨を話す、人口が減少しているこのカリフ村を復興する為には村で仕事を作る必要がある、現在、港町エドモンドとマーサの距離は比較的平らな海岸線を回りおよそ六十キロの行程がある、荷馬車だと途中一泊して進む行程なのだが、ロケット号を使えば直通だと3時間から4時間程で行ける、だが直通にするとカリフ村に立ち寄る理由が少ない、その為にわざとカリフ村で荷物を詰替える必要を作り、荷運びの仕事と昼食の時間をカリフ村で過ごさせ食事などで外貨を得る方法を考えていたのだ。
「なるほど、ラキどう思う?」
「ゴウさん、それでどれぐらいの時間になると考えていますか?」
「およそ6時間ぐらいで移動出来るんじゃ無いかと思っています。」
「6時間!!それは早い!」
これまで2日かかっていたのが6時間になるのだ商人としてはこれ以上に無い移動手段であった。
「ラキ、早いのはわかったが商人は使うと思うか?」
「・・・値段にもよると思いますが、需要はあります。
ゴウさん幾らにしようと思っていますか?」
「どうしましょう?ラキさん、今エドモンドとマーサまでどれぐらい費用がかかっていますか?」
「そうだな、質によりかなり変わるが荷馬車の馬代が銀貨50ぐらい、護衛が金貨1から2枚、全員の宿泊料金が30枚、あと食事代とかを考えれば、およそ金貨2枚から3枚といったところか。」
実際は運ぶ物や早さ、安全性次第で費用は跳ね上がっていく、ラキが言ったのは一般的な予算の話であった。
「それなら一度の乗車で一人銀貨1枚、荷馬車1台分で銀貨50枚にしましょうか。」
「はぁ?安い安すぎます!」
ラキは値段が安すぎる事に驚く!
「カリフ村までの値段ですから、結局倍の値段になりますし、ここでの荷運びの値段とか食事代を考えれば金貨2枚を切るぐらいなるのではないでしょうか?」
「いやいや、それでも安すぎます、早く着けて安いとなれば全ての商人がこっちを利用・・・」
「そうです、私としてはカリフ村に利益があればいいんです、これでも充分収入になりますよ。」
「ゴウさんがいいのなら私に問題ありません、それでチケットの販売についてお聞きしたいのですが?」
「チケットは駅、乗った建物内にある券売機で買えるようになっています、銀貨を入れれば目的地ボタンを押せば買える仕組みになっています、あと、定員、定量を超える場合は売切れとなり購入出来ません。
詳しくは帰りに駅に行った時にもう一度説明しますね。」
「お願いします、それで優先販売とかは?」
「うーん、今はまだ考えていません、ですが村と縁深い人にはそれなりに優遇してもいいと思ってますよ。」
「是非お願いしたい!」
ラキの眼は新たな商機に輝いていたのだった。
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