第7話 帰宅

「ゴウさん!どこ行っていたんですか。」

村に帰ると駅の周辺を村人達が探していた。

「少し出掛けていただけです、でも村の人がいるなら丁度良かった。

お酒を買ってきたのでみんなで飲みましょう。」

「なに!酒だと!」

村の男達は酒と聞いて目を輝かせている。

「荷台に積んでいますので降ろすのを手伝ってください。」

「おう!」

村人達は村の倉庫に運び込んでいきながらいくつかの樽を村の広場に持っていく。


「新たな村人、ゴウに!乾杯!!」

「「乾杯!!」」

酒のチカラは偉大だ、村人からすぐに熱烈歓迎される。


「ニナの嬢ちゃんと寝たんだろ?」

「えっ、あはは・・・」

「誤魔化さなくてもいいって、タラスの奴が言ってたからな。

まあこれだけの酒をすぐに持ってこれる奴だ、タラスも今頃ホクホクしているだろう。」

「ちげぇねぇ、どうだ何ならウチの娘とも寝ておくか?

まだ、月のモノもきてないがな。」

「それって子供じゃないですか、寝ませんよ!」

「だがちょっと抱かれてこれだろ?ウチも考えたくなるな。」

男達は打算も込みで女を押し付けようとしてくる。


「駄目ですよ、ゴウさんはウチの物ですから。」

ニナが俺の手を引っ張る。

「おうおう、言うようになったな、オボコ娘が。」

「オボコじゃ無いですよ!もう1人前の女ですからね。」

「なんだ、早くも1人前のつもりか?」

酔った男達のシモネタは全開であり、ニナをからかってやまない。

「ゴウさん行きましょう、此処にいると下品がうつりますよ。」

ニナは俺の手を引き、家にかえって来る。


「さて、ゴウさん、今宵も楽しみましょう。」

二人きりになるとニナの肉食動物の気配が増す。

「お手柔らかに・・・」

今宵も俺達は獣になるのであった・・・


「ゴウさん、昨日の酒について聞きたいのだが少しいいかな?」

翌朝、タラスが酒の出処について聞いてくる。


「昨日、私が建てた建物を覚えていますか?」

「ああ、村の外に建てたやつだろ?」

「そうです、詳しくははぶきますがあそこから森を抜けてアルスまで行って買って来ました。」

「なんだと!大森林を抜けたというのか?冗談も程々にしなさい、そもそも君の姿が見えなかったのは半日程度じゃないか、直線で抜けれたとしても何日もかかるはずだ。」

「信じてもらえないかも知れませんが・・・

そうだ、今度一緒に行ってみますか?」

「だ、大森林にか?行けるわけが無い!」

タラスにとって大森林は恐怖の対象である、森の浅い所でも危険があるというのに横断するなど夢のまた夢である。


「そうですか、それだと証明することが・・・

そうだ、それなら隣町、えーとなんて言いましたっけ?」

俺は地図にあった隣町の名前が出てこなくて言葉に詰まる。

「エドモンドのことか?」

「そう、そのエドモンドまで行ってみませんか?」

俺は頭に地図を浮かべエドモンドまでの線路をイメージする、町の中まで無理でも少し離れた所までなら線路を引けそうだった。


「エドモンドか、それなら危険も少ないな、だが村長の私が村を離れる訳にはいかない、ニナ、ゴウさんと一緒に行ってみなさい。」

「私がエドモンドに行くの?」

「そうだ、エドモンドには商人をしているラキがいただろう。あいつから手紙を貰ってきてくれ。」

「わかったわ、ゴウさんよろしくお願いします。」

「ええ、どうです、すぐに行きますか?」

「そうですね・・・

明日の早朝にしましょうそれなら一日で帰って来れるはずですから。」

「いえ、今から行ってもすぐに帰れますけど。」

エドモンドとの距離は20キロぐらい、まだ朝だ、今から準備しても昼までには着くだろう。


「またまた、エドモンドも結構遠いんですよ。

明日の日の出に合わせて出発しましょう。」

ニナの薦めもあり、俺は翌日以降の出発を受け入れるのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る