第6話 商売

俺は呼び出したロケット号を少し動かしてみる。

どうやら燃料はいらないみたいだ、サファの配慮か石炭を燃やす事もないので公害が発生しない仕様のようだ。

一応煙が出るのだが、どうやら湯気のようだった。

これなら、アルスまで行けそうかな?

俺はロケット号の試運転もかねてアルスに向けて走り出す、時間がかかるようなら途中で引き返すつもりではあったのだが・・・


「着いたよ・・・」

だいたい3時間ぐらいで森を突き抜ける事に成功していたのだ。

「君、この建物はなんなんだ!」

アルスに作った駅の周辺には人だかりが出来ていた。

その中で鎧を着た兵士と思われる者が話しかけてきていた。


「これは鉄道と言うものでこの森を抜けてカリフという村まで行ける物です。」

「カリフ?それは辺境の村カリフに間違いないか?」

「ええ、そうだパーシという薬草を摘んで来たんです、この街で売ることはできませんか?

3時間ぐらい前に摘んだので鮮度は大丈夫だと思うのですが?」

「パーシだと!誰か目利きが出来るやつはいないか!」

「ならば私が。」

商人らしき人がパーシを確認する。


「し、しんじられない、パーシに間違い無いがこれ程の鮮度は初めてみる、君これを売ってくれ!1つにつき金貨10枚出そう!」

「いいですよ、売りに来ましたし、そうだお酒とか売っている所はありませんか?

田舎で飲めないような物がいいですね。」

「それならウチで用意しよう。支払う金貨から引いておくがいいかい?」

「そちらの方がありがたいです。この荷台に載せてもらってもいいですか?」

俺はロケット号に荷台を呼び出し載せてもらうように頼む。

「か、構わないが、持って行けるのかね?」

「これは馬より引くチカラがありますから、この荷台に乗るぐらい売ってください。」

「わかった、すぐに用意する。

おっと、名乗り遅れたね、私はアルスで商会をやっているダムドというものだ。

今後も贔屓に頼むよ。」

「私はゴウです、田舎者ですので知らない事ばかりですがよろしくお願いします。」

俺とダムドは握手を交わす。


「ちょっと待ってくれ、君がカリフから来たことはわかったが少し説明してくれないか?」

「えーとあなたは?」

「私はこの街で衛兵をしている、トムズと言う。

領主様に報告しなくてはいけないのでな、説明してくれないと困るんだ。」

「説明と言われましても、これは乗り物でカリフとアルスを直線で移動出来るようにした物です。」

「直線だと、森を突破しているのか?」

「はい。」

「魔物に遭遇するだろう、君はそれ程の猛者なのかな?」

トムズはどう見ても武芸を嗜むように見えないゴウを不審そうに見る。


「魔物には会いませんでしたね。寄って来れないのかどうかはわかりませんけど。」

「うむ・・・何と報告すればよいのやら。」

トムズは報告をしようにも説明出来る自信が無い。

悩んでいるうちにダムドが酒を持ってきて荷台に積み込んでいく。


「ゴウさん、これが残りの代金です。」

ダムドは金貨55枚を渡してくる。

「あれ金貨10枚じゃ?」

「それは1つです、7房ありましたから70枚、そこから酒代として15枚引かせてもらいました。」

「そうでしたか、これは自分がウカっとしてましたね。

さて、では自分はカリフ村に帰ってきます。

ダムドさんまたの取引をお願いしますね。」 

「そう何度もになると値段が下がりますがよろしいですか?」

「ええ、需要が満たされれば値段が下がるのは仕方ないですよ、それに鮮度も持ちませんしね。」

「君はよくわかっているね、今後も良い商売をしたいものだ。」

「それでは。」

悩むトムズを置いて俺は帰路につくのであった。

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