第5話 朝チュン
翌朝。
「ニナさん、何でこんな真似を。」
「激しかったです、初めての私にあんな事まで・・・」
「じゃなくて、何で無理やり迫って来たんです?あのような真似は段階を踏んで親睦を深めてから。」
「ゴウさんがいつまで此処にいるかわからないじゃないですか。
この村には若い男性がいないんです。
このままじゃ村が無くなってしまうんです。
・・・それにオボコ女なんて陰口を叩かれるんですよ。」
どうやら限界集落になりつつあるカリフ村では子を成すことが最優先になっているようだった。
「してしまった以上、責任は取りたいと思います。」
「えっ!それじゃ!」
「ええ、それぐらいしか出来ませんが。」
「じゃあ今晩からも子種を頂けるのですね。」
「ええ、毎日というわけにはいかないかも知れませんが。」
「お父さんに伝えて来ます。」
ニナは嬉しそうに部屋から出ていった。
「これも価値観の違いかな・・・」
俺は結婚を覚悟していたのだが、ニナは子種を得れる事で満足のようだった。
朝食を済ませ、俺は村の入口横に来ている、ニナが隣にいるのは逃さない為だろうか。
「ゴウさん此処で何をするんですか?」
「ちょっと試したい事があって、ここは誰かの土地ですか?」
「村の外ですし、誰かの土地では無いですよ。」
「それなら私が使ってもいいでしょうか?」
「ええ、いいと思います。」
「それでは・・・」
俺は頭の中で浮かび上がる地図に駅を作る、そして経路となる線路を引き、森の反対側の町繋げようとするが中々上手くいかない、どうやら建設不可の場所がある場合は線が赤色に光るようだ、俺は慎重に調整しながら街まで線路を伸ばし、反対側にも駅を作る。
『建設を開始しますか?』
俺の頭にアナウンスが響く。
当然イエスと答えると目の前には改札と大きめの屋根、あと職員用だろうか、小さな部屋がある駅と森に続く線路が現れる。
「なんですか、これは!」
ニナは目を丸くするが俺としてもいきなり現れるとは思っていなかった。
「これは俺のチカラなんだけど、初めて使うから、どんな事が出来るかわからないのです。」
「えっ、家を建てれる魔法じゃないんですか?」
「ちょっと違うかな、まあ家と言えば家なのか?」
俺は部屋を見ると狭いが一応寝れない事はなさそうだった。
「となるとゴウさんは村に住んでくれるんですね♪」
ニナは嬉しそうに微笑む。
「責任は取りたいと思っているよ、それよりこの村で他所で高く売れる物ってないかな?」
「高く売れる物ですか?
うーん、商人さんが言うにはこの村の薬草パーシを摘んでから3日以内に煎じて服用すれば万病に効くとかで高く売れると聞いた事はありますが、ここは辺境なので早馬を使用してもあまり遠くまで運べないとかで隣町のマーサの商人がたまに買いに来るぐらいですね。」
「なるほど、他には何かあるかな?」
「他は・・・普通の物ばかりですね、一応魔物の素材とかもあるんですけど、高くは売れていないですね。」
「パーシって何処にあるかわかる?」
「ええ、これです。」
ニナは壁際に生えている草を引き抜く。
「えっ、これなの?雑草みたいに見えるけど。」
「この辺りだと雑草みたいな物です、何処にでも生えるのですけど、この村以外じゃ育たないとか。
お陰でこの村に病人が少ないのが唯一の救いですね。」
「これって引抜いてそのままで売れるの?」
「はい、まあ売るなら品質のいい森の近くの方がいいかも知れませんけど、引抜いた状態で買い取ってくれますよ。」
「へぇ・・・ちょっと見てこようかな。」
「森には入っては駄目ですよ、村の近くなら大丈夫だと思いますが、陽の光が少なくなった所からは魔物が出てきますから。」
「怖いな、森の中には行かないから大丈夫。」
「そうですか、それならいいんです。
さて、私はご飯の用意してきますね。
なるべく早く帰って来てください。」
「わかったよ、ありがとう。」
俺はニナと別れ森の近くに見に行くとパーシが沢山生えている。
「さて一応検証もいるよな。」
俺はパーシをいくつか引き抜き駅に戻る。
俺は頭に浮かんだ機関車を呼び出す。
出てきたのはロケット号だった。
「おお!!すげぇ、博物館級じゃん!」
この蒸気機関車は産業用蒸気機関車の原点ともいえる存在、実際に見るのは初めてだった俺は少し興奮していた。
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