第3話 反撃
レダはハラリと頭に巻いた麻スカーフを取り去り頭巾のように小さな顔をスッポリ覆う。
『さてーーー……」
素早く計算を巡らせ、ザザザッと必要な物を手に取った。
事は緊急を要する
先ずは巾着袋をゴソ……っと探り、2本の投げ縄を取り出す。
1本はスルスル可動式のループのみが先端に予め作ってある物、もう1本には鋼鉄製の鋭い5本の鉤爪が結びつけられている。
レダは素速く窓から身を乗り出し、剥き出しのテラスに放置されている樽の下側輪型金属部分に丁度来るようループをシュシュシュと大きくして被せた。
ーーーギュッとキツく引き締める。
レダは馴れた手さばきで素速くヒョイッと解ききり下に垂らした
「さてーーーこっちは上手く行くかしら?」
残りもう1本の鉤爪付きの方はカンッッッ……!
ググッと木材部分にしっかと突き立てる
レダは抜けないことを確認後、その上でヒョイッとガーゴイルの上をロープを通過させ、一旦窓辺から『残り部分』〜
室内に力いっぱい縄の束を放り込んだ。
『細工は隆々〜〜〜っと!』
ぴょこんと部屋の中に引っ込んだレダは、レモネードの入っていた空ビンを掴む。
くるんっと埃よけの為に椅子を覆っていた布でくるむと四隅を握りしめ、勢い良くブンブンと風車のように回転させる
「はっっっ!!」
瓶を重しにした布の塊を躊躇うことなく、金髪のクルクル巻き毛の少年を追いかける先頭の男に向かって鋭く投げ飛ばした。
「!!何だ?!」
布の塊は狙い違わず
恥知らずの男は、自分をスッポリ覆う巨大布地に視界がいきなり遮られて藻掻いた。
頭である彼が急に立ち止まったせいで、次々に後続の手下達はドスドスドスと折り重なるかに背中にぶつかる。
レダはそれでも手を緩めない。
冷静に第二弾ーーー次の手を打った。
潤滑油がまだタップリ残っている小瓶を、実に素晴らしいコントロールのピッチングで重なる男達の足下を目がけてぶつける。
なにせ広々見渡せる高所からだ
楽々面白いように目的の望みの場所に命中、落下し敷石の上に中身をドロリとぶちまける。
「ウワァ〜〜〜〜〜!!!!」
スッテンコロリン♪
モゾモゾやっと体勢を立て直したかに思えた所を再び又、無様にツルンと足を滑らせて全員が全員ひと餅にビタビタと転がる。
しかも仲良しこよし、尻餅もベタンと同時だから、ナンダなんだとチラチラ見つつ通り過ぎる人々の失笑をドドッと大いにかった。
ーーーレダはこのほんの僅かな隙、勝機を逃さなかった
旅籠室内に投げ込んだロープを掴むが早いか、ヒラリと思い切りよく3階窓辺から壁を蹴り下界にダイブした
ピンーーーーー!!
ガーゴイルの雨樋を支点に、スルッと危なげなく軽々地上に降り立った
タンッと軽快な靴音をたてたレダは、今正に自分の背後で起きたビックリ仰天な顛末に〜
思わず、しげしげ見入った余り
スッカリ逃げることを忘れ足を止めた、はしっこい少年に向かいピラピラと手招きをした。
「早くコッチへ!」
直ぐに意味を察したらしさからどうやら頭も良いらしい。
少年にも自分と同じロープを掴ませると、レダは躊躇うことなくもう1本の垂れた、樽にループで結ばれた方を力任せにガシッと引っ張る。
〜雨水タップリ……!
縁まで満水状態の重い樽は不安定な下部からの急激なパワーに勝てなかった
〜重い木製の樽が落下し始めると同時に
石材ガーゴイルを軋ませながら、スルスルとまるでお猿さんのように二人の軽い体は窓辺までひと息に浮き上がる
さてーーーー
窓の
自重と負荷に耐えきれず〜更にいい加減、放置の経年劣化
どこもかしこもガタピシ老朽化していたせいで、素材全体が耐えられなかった
地面に激突するまでもなく途中で古びた樽はパァンと鉄枠がはじけ飛ぶ。
同時にドロッドロの中身ーーーー
バッシャァーーーーンッッ!!
再びなんとかノソノソ立ち上がりかけの男達の集団に向かって、空中から惜しみなく全部をぶちまけたのだ。
〜油で転んだせいで姿勢を低くしていたから堪らない
一応はいなせに伊達男を気取った格好の上から下まで、変な匂いがプンプン漂う〜
しかも正体不明の緑色の藻までがプカプカ浮かぶ元雨水を、頭からザンブと全身被る羽目になったのだ
ワァワァギャァギャァ〜〜
首尾良く無事、少年と共に室内に戻ったレダは、もぅ追いかけっこどころの騒ぎで無い〜
悲鳴を上げ阿鼻叫喚の、互いにののしり合う格好悪い男達をコソッと窓辺より見下ろしフフッと薄く嗤った。
『あースッキリしたぁっっ』
樽がバキバキに壊れたお陰でブラブラになった、二本の格別に頑丈なロープ。
〜両方握りしめていたこちらも、お陰で容易く回収出来、無駄な出費をすること無く、しかもチャンと難なく痕跡も消せた。
言っては何だが、結構高級品〜
特に五本の鋼鉄製鉤爪は鍛冶屋手作り品、だからとってもお高いッ!
絶対に回収をするべき、レダにとって重要で大切なアイテムなのだ。
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