プロローグⅢ~転生した少年~

 皇歴250年

「奥様、おめでとうございます。元気な男の子ですよ」


 侍女が赤ん坊を抱きあげ、金髪碧眼の女性へと預ける。


「お名前は決められているのですか?」

「えぇ。あなたの名前はレージ。

 レージ・ロストよ」



「おぎゃぁぁぁぁ!!」

(えぇぇぇぇ!て、転生してしまった。



 やったーーーー!)

 俺は心の中で叫びまくっていた。




 ~皇歴258年~





「こら!レージ何してんの!また一人で街に行ったでしょ!」

「ごめんって、母さん」

「ライルが真似したらどうするの!」

「はいはい」


 今母さんに怒られている奴。それが俺、レージ・ロストだ。

 今年で8歳になる。



 俺はいわゆるな転生者というやつで、前世はブラック企業勤めの冴えないリーマンだった。


 ある日上司の愚痴を言いながら残業してたら、急に心臓が締め付けられるように痛くなって。

 救急車で運ばれてて、もうダメだなーとか思ってたら、こうなってた。

 もともとこんな感じの異世界小説は読んでたから、転生した直後はワクワクしてたんだよ。

 カモン!チートスキル!って。


 そんな感じでウキウキだった俺だが、困ったことに8歳になるまで全然覚醒イベントがない。


 家族4人で毎日を平和に過ごしてるのだ。


 いや別にハードなことを期待してるわけじゃないけどさ、ちょっとは期待してもいいじゃない?

 そもそも神様も現れてくれなかったんですがそれは……?何か説明くらい下さい!神様!

 

 さすがになにか起こってくれよ!と思っていると、気づけば8歳になっていた。



「そういえばレージ、あんた最近本読みが好きなのかい?」

「うん!色んなことを知れるから!」

「ふーん」


 次は俺の転生した国についてでも話しておくか。

 俺が転生した国は、ファリストン皇国の中にある魔法都市エンヴィシスってとこだ。

 紛らわしいが、日本でいう県だと思ってもらっていい。


 このエンヴィシスでは、魔法がめちゃくちゃ普及しているようで、それを聞いた時は興奮しまくりだったね。

 しかも体内には魔力が流れているから、しっかり鍛えれば魔法使えるっていう。


 ね?


 わくわくしまくりで今魔力を探してるんだけど、残念なことに全然分かんない。

 でも、ありがたいことに俺の両親はどちらとも魔法に関するえらい人らしいから、教えてもらえそうで安心してる。



「えー!にーちゃんまたどっかに行ってたの?お母さん怒らせちゃダメじゃん」

「そうだよ!あんたからも言ってやんな」

「急にその話題に戻すなよ……」


 この可愛い可愛い男の子は、俺の弟のライル。

 まだ5歳だし、俺みたいに中身20代じゃないから純粋なんだぜ。

 そしてカワイイ系の黒髪赤目のイケメンだ。

 ちなみに俺はカワイイ系の顔っていうより凛々しい感じの黒髪赤目男だった。やったぜ。


「いいかライル。男っていうのはな、小さいときは冒険する方がいいんだぜ?」

「何馬鹿なこと言ってんのバカ息子!」 


 俺が男のロマンを愛する弟に教えていると、すかさず母さんの鉄拳が頭に飛んできた。


「いてぇぇぇ!親父にもぶt……殴られたことないのに!まったく……。なんで父さんは母さんを選んだんだ?」

「もう一回やろうか?」


 母さんの背後に鬼が見えた。

「何でもないでーす」


 これ以上言うと幼いこの命を散らしてしまう。

 そうセンサーが働いた俺は、文句を心の中にしまう。


 この男かと思ってしまう人はサリア・ロスト。怖いけど俺の母親で、父さんと結婚して俺が産まれるまでは、ばりばりの冒険者をしてたみたい。

 この手の速さは、冒険者仕込みってことだな。


「ん?何の話だい?僕のことで何か話してた?」

「いやぁ、母さんと父さんお似合いだよなぁって」

「ありがとうレージ。でも母さんをあんまりいじらないでくれよ?」

「分かってるよ父さん」


 このやさしさマックスな男は俺の父さんのロルフ・ロスト。魔法技師をしてる。


 魔法技師っていうのは魔法を教えたり、魔法を改良したりする人のことだ。

 現世で言う研究職みたいなもんだな。だから当然給料もいいし、位も高い。


「なぁ、父さんって母さんのどこが好きなんだ?」


「んーー。全部かな?サリアはすべてが完璧すぎて僕にはもったいないとずっと思っているよ」

「もう//あなたったら」

「はいはい。のろけはもういいから」

 見ての通り夫婦仲も大変よろしいです。





「そういえば父さん、魔法使いになるにはどうしたらいいんだっけ?」


 命の危機から少し経ち。

 俺はかねて父さんから聞いていた魔法使いになる手段を再確認していた。


「ん?あぁ。そういえばレージはもうすぐ魔法学校の入学時期だなぁ」


 むむむっ!?なんだそれは!

 みんなに魔法使いはなんなんだーって話をしようと思ったら、なんてドリームな単語が!


「魔法学校あんの!!すげぇ行きたい!どーやっていくの?」


 俺はテンション爆上げになった。

 やっと……、やっと俺の時代がくる!


 心の中でガッツポーズを決めまくっていると、きちんと落ち着いている父さんが俺をなだめる。


「落ち着いてレージ。魔法学校は10歳になるとエンヴィシス中から人が来るんだ。魔力が扱えなくても入れるけど、さすがに魔力が扱える人との勉強内容は違ってくるけどね」


 なるほど。

 じゃあ10歳までに魔力が使えてないと魔法を教えてもらえねえってことだな。


 簡易的な目標が定まった俺は、両親の目の前で決意表明をすることにした。

 こうすればめんどくさくなってやらないなんてことができないだろうからな!(物理的に)


「わかった!じゃあ俺10歳までに魔力を使えるようになって、りっぱな魔法使いになるよ!」

「うん。焦らず頑張りなさい」




 よっしゃぁー!2年の間にめちゃくちゃ頑張って異世界ライフ満喫するぜ!!


 この2年間、俺は初めて目標ができた。

 神様!ありがとう!



 絆の輪がつながり始める







 〜魔法学校入学まで後2年〜

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