プロローグ~魔を求めし三人〜
プロローグⅠ~魔を愛すもの~
皇歴250年、魔導都市エンゲニスに一人の男が生まれた。
「バルトラ、あなたの名前はバルトラ・フォウ・グリストよ」
~皇歴258年~ バルトラ家
「父さん、そろそろ
「待て待てバルトラ、もうすぐ教えてやるから」
バルトラ・フォウ・グリスト。
魔導都市エンゲニスの伯爵家であるグリスト家に生まれた男である。
茶色い髪に深緑の目をした彼は今、父親であるエランに駄々をこねていた。
「ぐぬぬ…早く教えてくれないとグリスト家の長男として面目がたちません!」
「まだ大丈夫じゃないか?8歳だし、それにお前、まだ魔力合成もうまくいってないんだろ?」
痛いところをつかれ、バルトラは目をキョロキョロさせる。
「そっ、それはですね…。合成する魔導機との相性がいまいちよくなくて……」
「ふむふむ、じゃあ、父さんが一つコツを教えてあげよう。そうすればできるんじゃないか?」
「本当ですか!ありがとうございます!父さん!」
エランはバルトラにアドバイスをしながら、息子の才能に大きな関心を寄せていた。
(しかし、8歳で魔力合成の手前まで行くとは、俺ですら10歳の時だったのに……。
一通りアドバイスをしたエランは、咳払いをして話を変えた。
「オッホン! 話は変わるけど。
お前は魔導学園に10歳で入学して15歳で卒業するけど、その後はどうする?」
魔導都市には学園が存在しており、都市の子供は10才になると入学することができる。
「その後、ですか。うーん……、あ。
俺戦闘士になりたいです!」
「えっっ、本当か?」
エランは息子の斜め上の回答に驚いたが、納得できるものでもあった。
(こいつは好奇心の塊だもんな。そういうところは似てるんだよなぁ。
ん……?待てよ。ってことは)
「も、もしかして…、アリストみたいにほとんど戻ってこないなんてことはない…よな?」
エランはもしやと思いながら確認する。
「え?………。
大丈夫ですよ!多分!」
少々間が空いて曖昧な返事が返ってきた。
「なんの間なの!?あとたぶんって何!?ちゃんと戻ってきてね?!」
泣きそうな顔のエランを見て、バルトラは少し反省した。
「だ、大丈夫ですって。戻って来ますから。それに、母さんだって5年に一回は帰って来てるじゃないですか」
父に不安を与えないように、バルトラはなんとか言い訳を作る。
「そうなんだがなぁ……。寂しいじゃないか」
「ん?なにか言いましたか?父さん」
「いや、なんでもない……」
エランの思いはバルトラに華麗にスルーされていた。
「じゃ、俺自分の部屋に戻ります!
アドバイスありがとうございました!
父さん!頑張ります!」
父の寂しさなんぞつゆ知らず、バルトラは部屋へと戻っていった。
「あいつのやりたいようにさせるのが一番なのかもなぁ。
俺も頑張るか!」
バルトラが去った部屋で、エランは一人ごちる。
運命の歯車は動きだす
~魔導学園入学まであと2年~
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