第3話 転生した村で生贄になる
「ちくちょう!!」
ドン!
翌朝。
異世界にきて初めての朝は、男性の怒鳴り声と壁を叩く音で起こされた。
「お父さん、やめてしょうがないでしょう。」
「しかし、、、お前の姉だって、、、」
「おはよう、ござい、ますぅ」
重苦しい雰囲気のなか、何も知らない私が寝ぼけ眼で顔をだす
「あ、おはよう。ごめんなさいね、起こしちゃったかな」
「いえ。って、かなにかあったんですか?」
「あんたには関係のないことだ!」
はいはい、まあそうでしょうね。いいですよ今日早めに出ていきますから。
「あの〜、昨日はありがとうございました。今日早めにここを発ちたいと思っていますので、、、」
「え?行っちゃうの?」
はあ? メルロンそんなに涙目で私も見ないで、、、って、私にじゃない? お父さんに泣かされたの??
「メルロン、どうしたの? 誰に泣かされたの?」
「おいおい、勘違いするな、俺じゃない。ってか、泣きたいのは俺のほうだ。。。」
「実はね・・・」
お母さんが、慎重な面持ちで事情を話してくれた。
どうやらここ最近の日照りで、いよいよ村が危ないらしい。 そこで村の昔からのしきたりに従って雨乞いの儀式を行うことに。そこで、、、なんと生贄に若い娘の命が必要で、その生贄にメルロンが選ばれたらしい。
「え、いまどき雨乞いの儀式? そんなの効果あるんですか??」
「わからん。ただ、30年前ほども同じような日照りが続いた。そのときも儀式は行われて、その生贄が、、彼女のお姉さんだったんだ。」
「そうなの、、、私はあまりお姉ちゃんの記憶はなんだけどね、、、」
「だからといって生贄を捧げたところで今回も雨が降る保証はないんだろうし。。。」
「大丈夫です! お父さん、お母さん、私、行きます。この私の命で村のみんなが助かるなら、こんな嬉しいことはないわ」
「メルロン。。。ううっううっ」
もうお父さん泣きすぎ。お母さんももらい泣きしちゃって・・・
でも、これはちょっと、いただけないわね。 こっちの世界がどんな儀式をやるのか知らないけど、雨乞いに生贄って、、、あっちの世界でもやらないわよ。だいたい、雨が降らない原因も分かってないのに。。。
そうか!
「あの〜、ちょっと提案なんですが、、、」
「なんだ、まさか君がメルロンの代わりに生贄になってくれるのか!」
「いやいや、そういうことでは」
ってかお父さん目が怖すぎ。お母さんもすがるような瞳やめてください。
「違います。だってそもそも村の人でない、関係ない女が生贄になってもしょうがないでしょう」
「まあそれもそうだな、すまない」
「で、私の提案なんですが、そもそも雨が降ってない原因って分かってるんですかね?それがわかれば、ちょっとはお役に立てるんじゃないかと。。。私、こうみえても気象予報士なので」
「ぎしょう?よぼうし?」
「気象予報士です! つまりちょっと天気に詳しいんです。なので、この雨が降らなくなった原因なんかを知っている人はいませんかね?」
「う〜ん、そういうことは、村長に聞いてみるのがいいのかのう」
「村長さんですね。じゃあその村長さんのところに案内してくれませんか」
メルロンのお父さんと一緒に村長の家に向かう。どうやら昨晩、机を叩いていたのは村長から話があったあとだったみたいだ。
「村長!」
「おぉ〜、昨晩は遅くにすまなかったのう。 そちらがメルロンか。少し見ないうちに大きくなったのう。 ん?ちと、大きくなりすぎではないかのう」
「ちょ、失礼な! あの、私、メルロンじゃありません!」
「はて? ではどちら様じゃ?」
「私、気象予報士をしています。あ〜、まあ天気にちょっと詳しいんです。 この日照りのことについて、詳しく教えてくれませんか?」
村長は、疑心暗鬼な態度ではあったが、この日照りの経緯を教えてくれた。
干ばつはこの村特有で約30年に一度やってくる。そのときの生贄もメルロンの母の姉だった。そのときは収まったので今回も生贄をすることになった、と。
「30年前の干ばつについて、原因な分かったんですか?」
「うーん、伝承では特に伝わっておらん。ただ生贄を行った、と」
「それだけで、今回も生贄って・・・」
「とにかく、この村はそれだけ切羽詰まっている、ということじゃ」
まあ分からないでもないけど、、、ただ、原因はわからないもののこれは何らかの異常気象ね。だとすると生贄はナンセンスだわ。
「ちなみに儀式はどこで行われるんですか?」
「ん? 海の東にある丘の上じゃ。そこで10日10晩、火を炊いて祈祷するんじゃ。 火魔法を使えるやつが総出でな。」
海の近くで、火を炊いて。。。もしかして。
「あ、あの〜じゃあ、一旦私にその儀式を任せてくれませんか?」
「はあ? なぜ今あったばかりのあんたに大事な儀式を任せなきゃあかんのじゃ」
「そ、そうですよね。。。」
「それともなにか? あんたが生贄になるのか?」
「へ? 生贄って村の人でないとだめなんじゃ?」
「まあ、一晩泊まったら、もう村の住民じゃろう」
「えええ? そうなの?」
「なあ、みなの衆、どうじゃぁ」
ちょっとお父さん助けてよ〜って、なにその嬉しそうな瞳。ちょっとたしかにメルロンが生贄になるのは、私も本望じゃないけど。。。
「あ、わかりました。 じゃあ生贄になります」
「ほ、ほんとうか? じゃあ早速」
「あ、でもその前に、私に考えがあるんです。」
「なに?」
「うまくいけど、生贄とかしなくても雨を降らせることはできます」
「ほんとうか?」
「はい、なので一旦私に仕切らせてください」
「うーむ、分かった。 じゃが、もし失敗したら、お主に生贄になってもらうぞ」
ええ〜、まあ大丈夫かな。
お天気キャスターのお姉さん、転生して天気魔女になる 青木タンジ @sakaaaaaan
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