第13話 雷のダンジョン
ナインデスティニーでダンジョンに行けるのは土日の週末だけだ。月曜日から金曜日は学園パートでヒロインとの好感度を上げて、土日はダンジョンに行く。と言う流れになる。
ヒロインを一人も攻略してない段階では、基本学園パートはスキップだ。話しかけても同じ事しか喋らないし、何もする事がない。
だがリアルでは、学校が終わった後にダンジョンに行く事ができた。更に言えばダンジョンなんかいかなくても学園パートだけでハーレムを築く事ができるかもしれない。
なんといっても自由だ。生徒会長を買い物に誘う事も、校長室に行って校長先生に話しを聞く事も、ヒロイン以外の女性に話しかけて、あんな事こんな事するのも、全て自由だ。
そんな自由の権利を得ている俺は学校が終わり、自由を堪能・・・する事なく、スズと雷のダンジョンに来ていた。
「いきなりダンジョンに来てどうするの?」
「スズってレベル1だろ?」
「うん。」
「ならMPは10ぐらいだよな?土の玉は消費2だからどのみち土日に行ったってすぐにMP無くなるだろ?」
「うん。」
「俺がレベル3でMP30あるから氷の玉を15回使える。まあMP回復薬を使えばいいんだろうし、魔法を使わずに杖で倒す方法もあるけど、安全にレベル上げできる方がいいだろ?」
「毎日二人のMPが切れるまでダンジョンに通うって事?」
「正解。1時間ぐらいかな?それを繰り返せばレベルも順調に上がるはずだ。レベルが上がれば攻略もしやすくなる。どうだ?」
「すごい!そんな事考えた事もなかった。」
やっぱりか・・・ここってナインデスティニーの世界だから多分そうじゃないかなって思ってたんだよ。
ちょっと考えれば思いつくだろうし、リアルならそのうち平日もダンジョンに来る人が増えるだろう。
今はまだ、知られていないなら、今のうちにスズと雷のダンジョンを攻略してしまおう。それに毎日スズと二人でダンジョンデートが楽しめるんだ。
仲だって深まるはずだ。
「スズ!モンスターだ。」
あれは雷狐だな。スズにまかせていけるか?そう言えばスズとパーティー組むのって土の髪飾り渡してからだから魔法が発動しないっていうのがどんな感じなのか見た事ないな。
「わかった。土の玉!」
ちゃんと魔法出るじゃん。だけどまあいくら弱点属性でも一発で倒すのはムリか。
「氷の玉!」
そういや俺ってレベル10で魔法攻撃力もかなり上がってたな。この辺のモンスターなら一撃で倒せるな。変に思われるか?まあ適当に誤魔化せばいいか。
「やった。」
「うまく土の玉出たじゃん。」
「うん。」
「この調子でドンドン行こう。さすがに今日はレベルは上がらないだろうけど、明日にはレベルがあがるだろうし。」
成長の首飾りをスズに渡すか?いや、あれは一つしかないし、俺だってレベル10だ。それはしない方がいいか。
それに焦る事はないか。まだ3ヶ月以上もあるんだ。ゆっくりでかまわないだろう。
それから俺とスズは月曜日、水曜日、金曜日は放課後に一緒に雷のダンジョンに行き、土曜日もMPが尽きるまで雷のダンジョンに通った。
そして1ヶ月後・・・
「シュン今日は地下20階までいきましょ。」
「この間地下15階まで行ったばかりじゃん。急ぎすぎじゃない。」
「そんな事ないわ。私はレベル6、シュンはレベル7十分いけるわ。」
見たか諸君。俺はこの一ヶ月でスズとかなり仲良くなった。そうこの時を待っていた。ここまでくれば土の髪飾りを渡しても大丈夫だろう。
丁度先週の日曜日に一人で雷のダンジョンの地下30階に行き、雷の指輪を手に入れた所だ。そうそうにスズを攻略して、次のヒロインの攻略を開始しなければ。
ストーリーはこうだ。次の日曜日に一人で土のダンジョンに行ったら運良く宝箱を見つけた。それを開けたら土の髪飾りが入っていた。
我ながらベタなストーリーだがそれでも、土の髪飾りを渡しさえすれば、スズの俺に対する好感度は天元を突破するはずだ。
「わかったわかった。念の為、MP回復薬をいくつか持って行こう。途中でMP切れとかシャレにならないからな。」
「大丈夫だって!」
「いやスズの場合、不発が連続したらすぐにMP切れだろ?」
「むぅ。シュンは意地悪ね。」
「ははは悪い悪い。だけどもしもの為に準備するのは悪い事じゃないだろう。」
「それはまあ・・・そうだけど。」
「なら決まりだな。MP回復薬は俺の方で買っておくよ。」
「わかったわ。」
そして、その日の放課後、俺達はMP回復薬を使う事なく、地下20階までたどり着いた。
「ほら、私の言った通りでしょ。」
「ああ確かにスズの言った通りだな。だけど、氷の矢!」
「油断は禁物だぜ。」
「うっ・・・ありがとうシュン。」
おおなんか良い雰囲気だぞ。もしかして土の髪飾りなんてなくても今日このまま、なんて事もありえるのか?
いやいや落ち着け俺。ここでミスったら今までが水の泡だぞ。土の髪飾りさえ渡せば好感度は天元突破だ。焦る必要はない。
そう落ち着け。落ち着くんだシュン。
スズの可愛さに抱き付きたくなる衝動を、理性とヘタレで抑えた俺は、
「気にするなよ。」
と、当たり障りない返事で返すのだった。
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