第9話 スズの為に土のダンジョンに
ナインデスティニーのゲームは、主人公にアレックスを選ぼうがカインを選ぼうが、アレックスがヒロインを手に入れる所からストーリーが始まって行く。
どのヒロインも何かしら問題を抱えており、その問題を解決する事でヒロインとの仲を急速に縮めるのだ。
例えば茶髪のスズ。スズは魔法がうまく使えない事を悩んでいる。本来はスキルで覚えてMPを消費すれば普通に魔法が使えるが、スズの場合はMPだけが消費されて魔法が発動しない事がある。
そしてそれを解決してくれるのがダンジョンだ。ダンジョンを攻略するとヒロインと仲良くなる為のアイテムが手に入る。
そう、ナインデスティニーの世界には9個のダンジョンが存在する。土のダンジョンに水のダンジョン、雷のダンジョンという具合だ。
リアルではどうかわからないが、1年生の間に攻略できるダンジョンは土、水、雷の3つで、どれから攻略を開始しても構わないが、一つ目を攻略すると、二つ目は8月に入らないと入る事ができない。ちなみに三つ目は12月からだ。
うまい具合に4ヶ月に一度新たなダンジョンが解放されて3年間で9つのダンジョンを攻略し、9人のヒロインを攻略するようになる。
主人公がアレックスの場合は、ダンジョン以外にもデートや旅行などのイチャイチャイベントが盛りだくさんだ。ちなみにストーリーを早く進めたい人用にスキップ機能も搭載している。
そして、主人公がカインの場合は最初の4ヶ月はレベル上げ、もしくはスキップして、主人公が一人目のヒロインを手に入れてから本格的なストーリーがはじまる。
あの手この手でヒロインを略奪して行く。アレックスが一人でダンジョンに行った日にはもい・・・アレだ。
そういや〜、カインが先にダンジョンを攻略してアレックスよりも先にヒロインを手に入れようとしたけど無理だったっけ・・・
ヒロインに話しかけても、アイテムを渡すって選択肢が出なかったもんな〜。
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あれ?カインがダンジョンでアイテムを入手して、アレックスはどうやってヒロインを手に入れたんだ?
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もしかしてダンジョンのアイテムって何個もあるのか?それともアイテムなんか使わなくても仲良くなれば自然にヒロインと付き合えるのか?
俺はゲームの知識をリアルでどれだけ使えるのか。そしてリアルならではの、ゲームでは出来なかったがリアルならできる事を一生懸命考えて、そして紙に書き出した。
おいおいおいおい。この世界にはスキップなんかないからもしかしてはじめの4ヶ月の間に3つのダンジョン全部いけるんじゃね?
だって考えても見ろよ。俺がスズ用のアイテムを手に入れてる間、アレックスやカインは他のダンジョンに行ってるかもしれないじゃん。なら俺だって入れるはずだよな?
俺がはじめに入ったダンジョンしか他の人も入れないとかどう考えてもおかしいし、不自然だ。それは100パーありえないだろ。
「リアルに1年は長いよな〜。正直それだけあれば生徒会長や校長先生、入学式で会ったリン・・・」
はっ!そうだ。俺って入学式ですでに一人の女性と仲良くなってたんだった。リンは何組なんだ?C組からF組のどれかなのは間違いないけど・・・
それにアレックスは爽やかイケメンでパッシモばりの陽キャだ。早めに接触してデリカとマリアの動向も見ておいた方がいいだろう。アレックスと仲良くなれば俺がA組に行ってもおかしくないだろうし。
「お~いシュン。早く食堂行こうぜ。」
おっ!考え事しててトリップしてたぜ。そうだそうだ。学校だ学校だ。二日目だ。今日こそスズに・・・
「ああ。わかったすぐ行くよ。」
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「なんだ?結局お昼誘えなかったのか?今日も昼にうちのクラスに来てたから誘っがけど断られたのかと思ったぜ。」
いやいややっぱいきなりお昼って不自然でしょ。もっとこうなんていうの少しずつ仲良くなってからじゃあお昼でもどう?って流れるのが普通じゃないの?いやまあ俺がヘタレなのも否定はしないけど・・・
それよりパッシモお前はなんなの?なんで今日のお昼友達は昨日とは違うメンバーでしかも又10人ぐらいいるの?教祖様なの?
「俺には俺の都合があるんだよ。ゆっくりでいいんだ。まだ学校生活って始まったばかりだろ?」
「気づいた時には他の男に取られてるかもしれないけどな。」
「うっ・・・」
結局俺は週末の休みまでの月、火、水、木、金の5日間となりの席のスズをお昼に誘う事はできなかった。
だけどいいもん。朝のおはようと帰りのじゃあは毎日言えたもん。嘘じゃないもん。
俺は気づいた。スズに話しかけれないのは俺にお助けアイテムがないからだと。アレックス?リン?知らん。スズにどうやって話しかけようか授業を受けながら考えてたらそんな事する暇は全くなかった。
いいんだ。俺はこの土日で土のダンジョンを攻略する。土の髪飾りさえ持っていれば俺に勇気をくれるはず。後は勇気だけだ!!
俺はスズを攻略する為に、一人土のダンジョンに向かうのだった。
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