第8話 茶髪のスズ

「おはよう。俺はシュン。よろしく。」


「スズ。よろしく。」


やったぞ。スズの隣に座れた。それにしてもスズって一番前に座ってるんだな。やる気がすごいのか?いやそうか。彼女の場合、魔法がうまく使えないから必死なんだな。


てかよくよく考えたら魔法が使えないってどういう現象だよって感じだな。スキルに魔法の名前があればMPがある限り魔法って使えるもんな。でもスズの場合、魔法が使えたり使えなかったりするもんな。


アレックスが土のダンジョンで、土の髪飾りを見つけてスズにプレゼントしたら安定して魔法が使えるようになって仲良くなっていくんだよな~。


でもアレックスってA組だろ。リアルで考えてA組のアレックスとF組のスズってどうつながるんだ?いきなりアレックスが現れて土の髪飾り渡したって普通受け取らないだろ?


こういうのってスズの悩みを聞いて、それを解決する為に、解決するアイテムが土のダンジョンにあるからってそこに行って、アイテムを入手して、それを渡すのが普通じゃね?


そうだよな?俺まちがってないよな?でもきっとアレックスが土の髪飾りを手に入れたら普通にスズに渡すだろうし、スズも普通に受け取るんだろうな~。だってそういうゲームだし。これって。


なら、アレックスよりも先に土のダンジョンを攻略するのが一先ずの目標だな。そして俺がいきなり土の髪飾りを渡してもスズはきっと受け取らないだろう。だって俺って勇者でもなんでもないもん。普通の村人だし。


なら、スズと仲良くなって悩みを打ち明けてもらわないと。まあその辺はゆっくりやればいいか。土の髪飾りさえ先に手に入れてしまえば、アレックスがスズを攻略する事もない。


それに、アレックスは同じ組のデリカかマリアを先に攻略するはずだ。同じクラスなんだし当然だよな。俺だってアレックスを選択した時はマリア、デリア、スズの順で攻略したもんな。


おっといかんいかん。せっかくスズが隣にいるんだ。コミュ力低くてもがんばって話しかけないと。


「一番前の真ん中に座るってスズってすごいな。普通こういうのって一番後ろとか窓際から埋まって行くんじゃないのか?現に今だって一番後ろの列と窓際はほとんど埋まってるし。」


「私はここに勉強しに来た。勉強するなら一番前の方が先生の言葉も文字も良く見える。貴方はなぜ私の隣に?貴方が言うように後ろの席はまだ空いてる。」


「それはスズが気になったからかな。だって後ろの席とか窓際がうまってるのにポツンと一番前の真ん中に座ってるんだもん。気になるじゃん。」


よしよしナイスだ俺。順調に話ができてるぞ。とりあえず長く話すとボロが出るかもしれない。ヘタレと言われればそれまでだけど、今日の所はこの辺でいいか。ていうかスズと喋れて俺は満足だ。


「そう。でも私の邪魔はしないで。」


「もちろんだよ。俺だって学校には勉強しに来てるんだ。これからよろしくねお隣さん。あっそれと俺の名前はシュンだから。よければシュンって呼んでくれ。」


「わかった・・・シュン。よろしく。」


よっしゃー!!!スズにシュンって呼んでもらえたぞ。アレックスよ。見てるか?お前に取られる前にスズは俺がちゃんと攻略してやるぜ。お前はデリアとマリアの攻略にもたもたしてくれ。スズを攻略したらすぐにそっちに行ってやるから。


俺は、スズにバレない様に、そしてバレても嫌がられない度合いでチラチラとスズの方を見ながら、一日目の授業を聞いた。


あ~席選択ミスった。こんなことならスズの後ろの席にすればよかった。とその日の晩、俺はとても後悔した。


その日のお昼ご飯はどうしたのかって?ははは。俺にスズをお昼に誘う勇気があると思うか?断られるのが怖くて誘ってない!!当然だろ。断られたら豆腐メンタルの俺は寮に引きこもる自信がある。そんなリスク負える訳ないだろう。


だから当然C組に行って、パッシモと一緒にお昼を食べたよ。パッシモ?ヤツはすげぇよ。お昼までの時間に友達が10人以上できてたよ。もはやお前が主人公かよ!?って思ったね。


おかげでお昼は10人以上の大所帯だったさ。さすがパッシモ。サスパだな。


「なあパッシモ。どうやればお前みたいにお昼ご飯に女の子を誘えるんだ?」


「おっシュン。いきなり気になる子がいたのか?同じF組か?」


「ああ隣の席の子なんだ。今日もお昼に誘おうと思ったんだけど断れるのが怖くて誘えなかったんだ。」


「そりゃお前断られる事もあるさ。向こうにだって予定があるだろ?」


「断られたら俺は学生寮に1週間は引きこもれる自信があるぞ。」


「バカ。それを気にしちゃ誘えるわけないだろ。そういうのはサラッと誘うんだよ。断られても気にしない。むしろ、断られてもサラッと流せ。そうすればその内お昼ぐらいなら付き合ってくれる。」


「おーーーあなたは神か!!」


「バカ。何言ってんだよ。」


なるほどなるほど。断られても気にしないか・・・俺にできるか。いや気にするよな。でも誰かが言ってたっけ。宝くじは買った人しか当たらないって。確かに声を掛けないと一生、一緒に食事をする事はできないよな。


は~。スズからお昼誘ってくれないかな?貴族の勇者アレックスならともかく、普通の村人の俺は無理か・・・。


「わかった。頑張ってみるよ。」


「おう。俺はシュンを応援してるぞ。」


そうして俺の学校生活1日目はすんなりと終わるのだった。








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