第3話 オープニングは普通5分

「歩きか。」


まあそりゃそうか。村から電車なんて出てる訳ないもんな。ってこの世界に電車なんてないか。ゲームじゃマップに目的地が見えてたから移動を苦に思った事なかったけど、これはきついな。


広がる草原、果てしなく続く道、見えない目的地、まるで母を訪ねてなんとやらだな。


いかんいかん。ようやく一人になったんだ。まずはステータスの確認だ。


「ステータスオープン!」


出たよ!出た出た。やっぱりコレなんだな。これでメニュー画面を操作するんだな。ステータスにアイテムとスキルしかないんだな。ヒロインとの好感度とか、セーブ、次の目的なんかもなくなってるな。それに地図もない。


まずはアイテムを見てみるか。


「薬草に、杖か。」


この辺は初期アイテムと一緒だな。よし、次は肝心のステータスだ。


シュン 


レベル1

HP10

MP10

攻撃力3

防御力3

魔法力10

魔法防御5

敏捷性5

運5


見事に弱弱だな。そういや〜入学式までは、モンスターとのエンカウント無しだったけど、魔法学園に行くまで本当にエンカウントしないのか?


魔法学校に行くまでに1つでも2つでもレベルが上がれば、入学式イベントも楽なんだけど・・・いや、そもそも戦うのは勇者と魔王だから俺は関係ないのか?


まあそこは魔法学校に向かってればわかるだろ。とりあえずスキルを確認するか。闇属性なら闇の玉を覚えてるはずだからな。


スキル

氷の玉


はっ?氷の玉?なんだこれ?えっ?氷の玉?氷魔法だと・・・


まてまて、氷魔法なんて初めて見たぞ。どう言う事だ?黒髪なら闇属性だろ?百歩譲っておかんの才能を引き継いでたとしても特殊属性なら初期は魔力玉のはずだ。なんでだ?


火、水、風、土、光、闇、雷、後、特殊属性の空間、重力の九種類だよな〜。氷、氷、氷、いややっぱりそんな魔法はないし、何度考えてもそんな髪色のヤツなんかいない。


妹の髪だって黒だったし。こんな事なら朝色々聞いとくんだったな。って言ってもリアルじゃコミュ力もそんな高くないし、俺にそこまで情報を引き出すような力はないけど。


まあいいか。考えてもしょうがない。村人で氷魔法が使えるシュンで納得するか。



ナインデスティニーの世界では、髪の色がその人の魔法属性を表していた。赤なら火、青なら水と言った感じだ。



「初期魔法ならMP消費は2だから氷の玉は5回使えるはず。モンスター5体倒せばレベルは上がるはずだから試し撃ちはもったいないな。」


それにしてもいつになったら魔法学校に着くんだ?果てしなく道なんだけど・・・そもそもこの道で合ってるのか?


・・・


もしかして道間違ってる?はっ?いやいやだって村からの道ってこの道しかなかったし。それに反対に進んでたならおとんもおかんも俺の事止めただろう。


あ〜やばいやばい。誰かいないかな?道聞かないと不安になってきた。誰にも会わないとか俺の村どうなってんの?そんなに田舎なの?確かに俺の地元は人が少ないから電車だって1時間に1本で1両編成だったけど、それぐらい何もないぞ。


あ〜考えたら喉乾いてきた。


・・・


は?あれ?俺食べる物も飲み物も何も持ってないぞ。えっ・・・


「ない。ない。なーーーい!」


どうするどうする?このままじゃストーリー始まる前に終わるじゃん。グッドエンドもバッドエンドもそうゆう話にすらならないじゃん。


普通旅立ちなら弁当とか水筒とか渡してくれるもんじゃないの?何やってんだよおかん!いや確認しなかった俺も悪いのかもしれないけど、俺だっていきなり知らない所に来たからパニクってたんだよ。


わかるだろ?優秀でもなんでもないんだから普通パニクるっしょ。


は〜・・・


それに、なんだよオープニングでゲームエンドって、普通オープニングって簡単3行か、かかっても5分だろ?もう2時間は経ってるぞ?


・・・


落ち着け。落ち着け俺。言ってもしょうがないだろ。誰か人を見つけて食べ物を貰うか、町を見つけるしか方法はないだろ。この道を進むしかない。


行けばわかるさ。


「あった。町だ!」


やった。ようやく着いた。もう無理。今日はもう歩けないぞ。東京駅から六本木まで歩いた時より疲れた。早く休みたい。そして飯食いたい。


・・・


「一泊10ダルになります。」


「えっ?」


「えっ?一泊10ダルです。食事付きなら15ダルですよ。」


お金・・・


そうだ。そりゃそうだ。金払わないと泊まる事も飯食う事もできないじゃん。普段からキャッシュレスに慣れきってたからすっかり忘れてた。


って携帯もクレカも持ってないじゃん。俺ここで死ぬの?宿にも泊まれず飯も食えず死ぬの?セーブできないからロードもできないじゃん。


死ぬの???


「お客さん?」


待て待て、諦めるのまだ早い。言ってただろ。諦めたらそこで試合終了ですよ。って、ありがとう先生。俺はバスケが・・・いやいやまだナインデスティニーをプレイしたいです。


お金、お金・・・ほらちゃんと探せばあるじゃん。良かった〜。よくよく考えたら初期は100ダル持ってたよな。まあオープニングでいきなり減るとは思わなかったけど。


「じゃあこれ。15ダルね。」


「どうも〜。」


「あっ。それと俺魔法学校に向かってるんだけど、王都デスティニーってここからどれくらいかかるかわかる?」


「王都ですか?西の道を1週間ぐらいですね。ここはプリンスの町ですから。」


「プリンス?ここってプリンスなのか?」


「はい。えっ?知らずに来たんですか?」


「いや、ああ、教えてくれてありがとう。」


プリンスって東の端の町じゃん。更に東にあった俺の村って・・・



異世界転生した初日、シュンはようやく知ってる場所へと辿りつくのだった。





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