第2話 転生先は村人?

「知らない天井だ。」


目を覚ますとそこは見た事のない部屋の中だった。部屋と言ってもベッドと木のテーブルが置いてあるだけの質素な部屋だった。


「あれ?どこだここ?俺は確か自分の家で、ナインデスティニーをしていたはずだけど・・・」


全く知らない場所だぞ?夢か?いや、夢にしてはかなり意識がしっかりしてる。えっ?そんな事ありえるのか?


もしかしてこれって異世界転移ってヤツか?でもなんでだ?あれってトラックに轢かれたヤツが行くんじゃないのか?俺って死んでもないし、まだまだ30歳だから体力的にも死ぬのは早すぎるだろ?


あっ・・・


そう言えば、ナインデスティニーをはじめからプレイしようとして特別なストーリーをやりますかで、『はい』をクリックしたっけ・・・


えっ!?と言う事はここってナインデスティニーの中なの?えっ?本当に?特別なストーリーって俺がこの世界を体験できるって事?


待て待て。まずは状況確認だ。気づいてるだろ俺。異世界転移かもって言ったけど、自分の身体じゃないって事に。


服装はもちろん違うし、手や足、更に言えばお腹だ。メタボ真っ只中だった俺の腹が見る陰もなくなってる。


「ゲームの世界に転生した?」


おいおいおいおい。そんな夢みたいなことあっていいのか?ほっぺをつねっても痛いぞ。って事は夢じゃないのか?いや、ほっぺつねって痛いから夢じゃない。ってそもそもその考えがすでにおかしいけど。


でも見る限り楠木俊じゃないよな?鏡、鏡はないのか?部屋から出ればあるか?いや、何もわからないこの状況で部屋の外に出るのはまずいだろ。


ここがナインデスティニーの世界だとして俺は誰になったんだ?勇者か?魔王か?付くものは付いてるからヒロインになったって言う線はないだろうけど・・・


髪は黒っぽいな。なら魔王カインか?くそっ。情報が少なすぎて全くわからん。


「シュン?起きたの?」


シュン?俺の名前だ。えっ、シュン?カインじゃなくて?そう言えばカインって貴族の息子だったな。ならこんな質素な部屋な訳ないか。えっ?なら俺って誰なんだ?シュン?そんなキャラ、ナインデスティニーにいたか?いやそもそも勇者と魔王以外の男キャラってそんなに重要じゃないからあんまり覚えていないぞ。ここって本当にナインデスティニーの世界なのか?ちょっと怪しくなってきたぞ。


「起きてるじゃない。さっさと支度しなさい。今日は出発の日でしょ。学校に行ったら、しばらく戻ってこないんだから朝はみんなで一緒に食べるって昨日決めたでしょ。」


「あ、うん。」


今日から出発・・・そして学校。やっぱりナインデスティニーの始まりと一緒だ。でも俺って勇者アレックスでも魔王カインでもないぞ。どっちかって言うと、ただの村人って感じだけど・・・


やっぱりじゃん。おかんもおとんも村人って感じの服装だし、妹はまだ小さいけど、いや可愛らしいな。癒されるぞ。ってそんな事思ってる場合じゃない。こんな村人みたいな俺が学校なんて行っていいのか?いやまあ学校に行かないとナインデスティニーのストーリーは始まらないから、それを言ったらおしまいなんだが。


それにしてもおかんはけっこうな美人さんだし、おとんも顔の形はかなり整ってる。服装にさえ目をつむれば美男美女にも見えるな。妹はもちろんかわいいし、俺ってけっこうなイケメンさんなんじゃないか?髪は多分おかんに似てるんだろ。見てないけど。


だって、おとんって髪の色、銀色だし。おかんが黒髪だからそっちに似てるんだろ。それにしても銀色の髪か・・・って事は特殊属性だよな。俺は黒髪だから魔王と一緒の闇属性・・・って事だよな。いやそもそも忘れてたけどステータスを見れば俺の状態って一目瞭然じゃん。


何やってんだよ俺。いきなり知らないところで目が覚めたから全然冷静じゃなかったわ。名前も能力もステータス見れば一発じゃん。じゃあメニュー画面を。ってどうやってメニュー見るんだよ。キーボードないじゃん。


あっあれか。ステータスオープンって唱える、ラノベでよくあるアレか。いやでもこんな食事の場所で出すのはおかしいか。後でゆっくり自分の事は見てみるか。


「シュンよ。お前はこの村の誇りだ。まさか、あのデスティニー魔法学校に入る事ができる者が村から現れるなんて、しかもそれが俺の息子とは。頑張ってくるんだぞ。」


デスティニー魔法学園・・・やっぱりここはナインデスティニーの世界で間違えなさそうだ。しかも旅立ちの日って事はオープニングと一緒だし。


それにおとんがさらっと気になる事を言ったぞ。魔法学校に行くのは村では、俺一人なのか?俺ってもしかして魔法の才能があるヤツに転生した?


まあある程度は才能のあるヤツに転生してくれないと、何もできないもんな。それにしても村か〜・・・って事は俺村人じゃん。


村人か〜、村人かよ!どうせなら勇者か魔王、最低でも貴族が良かった〜。たしかに強くてニューゲームとかチート武器とかバカにしたけど・・・


はっ!!村人って言う勇者でも魔王でもないキャラでヒロインを攻略してみろって事なのか?それはそれで面白いけど、かなりハードル高くね?


いやいやナインデスティニーを極めた俺ならやれるか?てゆうかやるしかない。うん。やろう。


ハーレム王に俺はなる!!


ひとまず、魔法学校に向かわないとな。おとんもおかんも妹も名前さえわからないけど何とかなるよな。



そうして、シュンは名前も知らない家族との食事を終え、魔法学校へと向かうのだった。

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