第34話 パンケーキちゃんの弱点
「あなたの正体がわかったわ!ズバリ第2王子のウェーザーコックだわ」
私はリリーちゃんの手柄を横取りした。
「マカロンさん違います。王家甘味勲章の授与の場にはウェザーコック王子はいませんでした」
「そうだったの・・・」
私は恥ずかしくて穴があったら入りたい気分になった。
「あなたの正体はオーブスト王国の宰相アスパラ殿ですね」
「・・・」
キングダムは俯いたまま何も言わない。
「そして、【蛇龍王】を統率しているのがウェザーコック王子でしょう。2人が協力して悪事を働いているので、国王陛下の元まで悪事が届かない。もしくわ、届いたとしても揉み消しているのでしょう」
「私は、はやとちりをしてしまったみたいね。そう、【蛇龍王】のボスがウェザーコックと言いたかったのよ」
私は軌道修正を試みた。
「さすがマカロンさん、私と同じ推理をしていたのですね」
リリーちゃんはまんまと私の軌道修正にハマってくれた。
「アスパラ宰相殿、仮面で顔を隠すのは辞めましょう。全てわかってしまったのです。私と一緒に国王陛下の元へ出頭するのです。今ならやり直す事が出来るかもしれません」
「俺はアスパラ宰相という者ではない。もし、俺がアスパラ宰相であったなら、王族しか知り得ないケモ耳族の事を知っているのはおかしいだろ?」
キングダムはリリーちゃんの意見に真っ向から反論する。
「金の腕輪と言えばわかるでしょう」
リリーちゃんは勝ちほかったかのような表情でキングダムに近寄る。
「金の腕輪がどうした?」
「10年前に王家甘味勲章を授与されて、急激に貴族社会で力を増してのがアスパラ・ペペローネ家です。王家甘味勲章を授与された者は、秘密の書庫に入る権限が与えられます。秘密の書庫に眠っている禁書は、王家が世間にひた隠しにしている事実だと私は推測しています。そして、王家がひた隠しにしている事実とは、ケモ耳族のことだったのですね」
「さすがだな、リリー・ダンディライオン。お前はダンディライオン家の中でもずば抜けて知能が高く、そして、正義感も強いバカ娘だと聞いていた。だからこそ、サーペント様もお前の誘拐に手助けをしたのだ。ビートル・マンティス伯爵からの依頼は、ダンディライオン家のバナナを奪う事だった。ダンディライオン家からバナナを奪う方法はいくらでもあったのだが、いずれ俺たちの敵となるであろうお前を誘拐し、そして、バナナだけでなくお前の命も奪うまでが、サーペント様の策略だったのだ。しかし、大白蛇部隊が誘拐を失敗して、作戦を少し変更せざる得なかったが、飛んで火にいる夏の虫とはお前の事だ!当初の予定どおりバナナとお前の命を奪う」
キングダムは白い仮面を外して素顔を見せて、リリーちゃんに宣戦布告をする。
「アスパラ宰相殿、あなたの考えなどパンケーキ様が全てお見通しだったのです」
「え?」
私はリリーちゃんの言葉に思わず叫んでしまった。なぜ、ここでパンケーキちゃんの話が出るのかと。
「どういうことだ!」
アスパラ宰相が声を張り上げる。
「残念ながらダンディライオン家にはバナナはないのです」
「嘘を言うな!」
「嘘ではありません。ダンディライオン家が丹精込めて作り上げたバナナはパンケーキ様が全て食べつくしたのです。まさか、ここまで想定しての行動だったとは、パンケーキ様の考えは人知を超えています」
「そんなことはないわ」
とんでもないリリーちゃんの勘違いに、アスパラ宰相よりも先に私が声を上げてしまった
「そうです。それだけではないのです。パンケーキ様は、もしも為に金の腕輪を幻影の森に投げ込んだのです。アスパラ宰相、私の金の腕輪の場所はご存じですよね」
「そ・・・それは・・・」
「王家甘味勲章を授与した者しか付ける事のできない金の腕輪を、もし、他の誰かが持っていたらどうなるでしょうか?金の腕輪もしくは私を誘拐して、手に入れたかったバナナはパンケーキ様の胃袋の中です。使い道がなくなった金の腕輪は、どうするつもりなのでしょうか?」
「うるさい!お前を殺して一緒に土に埋めてしまえばいいのだ!」
計算が狂ったアスパラ宰相の怒りは頂点に達していた。
「私を殺すのは容易いことでしょう。でも、私を殺してもマカロンさんそれにパンケーキ様がいます。あなたに勇敢なマカロンさんと最強種族と言われるパンケーキ様を倒す事が出来るのでしょうか?」
「リリーちゃん、私を巻き込まないで!」と大声で叫びたかった。しかし、今は言える雰囲気ではない。
「ハハハハハ ハハハハハ」
アスパラ宰相は余裕の笑みを浮かべて高笑いをする。
「お前は何か勘違いをしているぞ!ケモ耳族は最強種族と言われるが、別名はポンコツ種族と言われているのだ!俺は秘密の書庫で知ってしまったのだ。ケモ耳族を倒す方法をな」
アスパラ宰相の余裕の笑みは嘘ではない。パンケーキちゃんに勝てる自信があったのである。
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