第26話 そして灰になる
『ズテ~~~ン』
「マカロンさぁ~~~ん。御者席は吊具を持って降りないと危険です」
私は夢中のあまり御者席をジャンプして、飛び降りようとしてしまった。しかし、足を引っかけてしまって地面に頭からダイブしてしまったのである。
「!!?×!☆」
私は脳震とうを起こしてしまって気を失ってしまった。
20分後・・・
「マカロンさん、マカロンさん、お気を確かにしてください」
リリーちゃんの必死の問いかけに私は目を覚ます。
「リリーちゃん・・・早く詠唱を止めないと」
私はパンケーキちゃんを助ける為に這いつくばりながら動き出す。パンケーキちゃんは、私がこの世界に着て初めてのお友達。ハラハラさせられる事のが多かったけど、無事にこの世界で生きているのはパンケーキちゃんのおかげである。私は大事な友であるパンケーキちゃんを見捨てることなど出来ない。
「あぁぁぁ~」
私は大声を上げた。それは前方に灰の塊が落ちていたからである。
「パンケーキちゃ~~~~~ん」
私は蛇のように体をクネクネと動かして灰の塊までやってきた。
「ごめんなさいパンケーキちゃん。助けてあげれなくて・・・」
私は両手で灰をすくって静かに握りしめた。さっきは出なかった涙が自然と溢れ出る。パンケーキちゃんに出会ったのは、ほんの数日前である。しかし、ブラックウルフに助けられたこと、ロックタートルの中で一緒に眠った事など、いろんな出来事が走馬灯のように私の脳裏に映し出される。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ~~~ん」
私は大声を出して泣き出してしまう。
「マカロンさん、マカロンさん、しっかりしてください。パンケーキ様は死んでなんかいません。その灰は魔道部隊黒炎龍です」
「ほ・・・本当なの?」
「はい。パンケーキ様の強さは私の想像の遥か彼方を超えるほどだったのです」
「よかったぁ~~~~~」
私の涙は安堵の涙に変わる。
「ところで、パンケーキちゃんはどこに居るの」
「あそこで倒れています」
リリーちゃんが指さす方向にはぐったりと地面にひれ伏せているパンケーキちゃんが居た。
「さすがのパンケーキちゃんも強敵相手に体力を消耗したのね」
「違います・・・」
「え!でも、パンケーキちゃんは死んでいないと言ったよね」
私は動揺を隠せずにリリーちゃんに詰め寄った。
「マカロンさん、マカロンさん、落ち着いてください」
「パンケーキちゃんが倒れているのに落ち着けないわよ」
「パンケーキ様はご無事です。ただ、おっさん達が置いて行った果物を全部食べてしまったので、お腹がいっぱいになって動けなくなっただけです」
「そ・・・そうだったのね。いつものことだったのね」
「そうです。村人達に協力してもらって、パンケーキ様を宿屋のベットにお運びしましょう」
リリーちゃんは1人で馬車を走らせて先に村に入って行った。私は静かに立ち上がりパンケーキちゃんの側に近寄った。
「全部・・・全部・・・私のモノよ・・・マカロンちゃんが私の為に用意してくれた大事な・・・大事な・・・」
パンケーキちゃんはイチゴをわしずかみにしながら、安らかな笑みを浮かべながら寝言を言っていた。
「ゆっくりと休むといいわよ」
私は可愛らしいパンケーキちゃんの寝顔を見ながらほっこりとしていた。
10分後、リリーちゃんが村人を数人引き連れて来て、パンケーキちゃんをタンカーに乗せて宿屋に向かった。
「リリーちゃん、果物を守りきれなくてごめんね」
結局、パンケーキちゃんがイチゴを全て食べつくしてしまったので、盗まれたと同じ損害が発生した。
「果物は3か月後にはまた実りますので問題ありません。それより、魔道部隊黒炎龍を叩き潰した事は大きな成果です。1名は逃げてしまいましたが、魔道部隊黒炎龍は壊滅したと言っても問題はありません」
「それならよかったわ」
「マカロンさん、ありがとうございます」
「私は何もしていないわ」
「いえ、マカロンさんがパンケーキ様を鼓舞してくれたおかげで壊滅できたのです。私がお願いしても、パンケーキ様が本来の力を出せたかどうかは疑問です」
「誰がお願いしても一緒よ」
「違います!パンケーキ様は果物を食べるのに集中していましたので、魔道部隊の詠唱に全く気付いていませんでした。しかし、マカロンさんが馬車からジャンプして、派手に転んでしまった時に、私は咄嗟に叫んだのです。『マカロンさんが死んじゃう』と。すると、パンケーキ様は烈火の如く私の所に駆け付けてくれました」
「パンケーキちゃんが私の事を心配してくれたの?」
「はい。頭から派手に転んで気を失ったマカロンさんを見たパンケーキ様の目は、今まで見たことのない鬼のような鋭い目つきになっていました。そして、同時に詠唱を終えた魔道部隊が爆炎砲をパンケーキ様に放ちました。パンケーキ様はマカロンさんに被害が及ぶとすぐに察知して、爆炎砲に自分から突進して、20mもある炎の球を受け止めたのです」
「パンケーキちゃんが・・・私の為に・・・」
「はい。パンケーキ様がすぐに飛び出さなければ、爆炎砲の熱気で私もマカロンさんも大やけどを負っていたでしょう」
「パンケーキちゃんは大丈夫なの?」
「私もどうなるのか心配しましたが、パンケーキ様は全く火傷を負うことなく、炎の球を魔道部隊に投げ返しました」
「それで、魔道部隊は灰になったのね」
「そうです。パンケーキ様はマカロンさんを守るために動いたのです。私の為にはそこまでしてくれるとは思えません。だから、マカロンさんに感謝をしているのです」
私はリリーちゃんの話を聞いてとても心地よい気分になった。
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