僕が君に。
三日後。
「あ、また会いましたね。」
君の姿に僕または落ち着きを失う。
「あぁ、はい。えっと、会えて嬉しいです。」
しまった。不要なことを言ってしまった。
君はほんの少し頬を赤く染め、そして笑った。
「ありがとうございます。会えて良かったですね。」
君の言葉は僕をからかっているように聞こえる。
恥ずかしさで僕の耳は真っ赤になる。
君が僕に数十センチの距離を開け、ベンチに腰掛けた。
すると、君が僕の膝の上に乗る本を見つめる。
「その本、どんな本ですか?」
「これですか?この本は恋愛小説で、自然の表現方法がすごく詩的なんですよ。物語の初めは...___」
僕はいつの間にかのめり込んで話してしまっていることに気づいた。
君の顔を軽く伺うとうんうんと頷きながら真剣に話を聞いてくれている。
「...ていう感じのあらすじなんですよ。」
「...とても面白そうですね。」
「もしよければ、読みますか?」
「え、いいんですか?」
「はい。僕、今ちょうど読み終わったので。」
「ありがとうございます。」
君はよく笑う。小さく、優しく、淡く笑う。
まともに君と出会った回数はまだたったの二回、それに数十分だけ。だけど僕はすぐに君に飲み込まれてしまった。
そして気づけばまたあの時間になってしまう。
名残惜しいがその気持ちを押し殺し笑顔で君を見送った。
僕は知らない。君が何者なのか。名前は何なのか。君を全然知らなかった。
でも、きっとまた会える。
君に会える日を想って、少しずつ満開に近づく桜たちを見上げながら公園を去った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます