777文字の功罪

 放課後の部室で紙パックの牛乳を飲みながら呆けていた。

愚痴る頻度が高くなってきたが、執筆のネタが一滴も湧いてこない。


「私との勝負が終わった時点で投稿を止めればよかったのではないか?

ネタがないと言いつつ、777文字での連日投稿は何かに取り憑かれているのかい」

黙々とノーパソに向かっていた先輩が顔を上げて言った。


「777文字の制限はいわゆる制約と誓約です」

そもそも、それ以上の文字数では書けないし、制限を設けることでその文字数までは頑張って書いている。

「たぶん、俺の書いてるのっていわゆる小説ではないんです。

せいぜい、設定資料とかフレーバーテキスト止まりです」

ここまで書いてきてなんとなく理由も掴めてきた。

「結局、キャラクターとかストーリーを新規に作るのができないんです」

ライトノベルとかは基本的にはキャラクターありきなんだと思う。

キャラクターがいないのでストーリーが動かない。

それでも、777文字の制約があれば、出だしと落ちがそれっぽければなんとなく形になってしまうのだ。

ただし、それ以上の長さのものはストーリーがないので書けない。


「ふむ。君は何を求めているんだい?」

何を求めているか……

実際のところ、小説に限らずゲーム等でも、新しい世界、知らない世界の先を見たいのかも知れない。

「知らない世界ですかね。読む場合も世界観のしっかりしたヤツが好きですね」

優先順位として、世界観 > ストーリー > キャラクター だろうか。


「そういえば、君からは好きなキャラクターの話は聞いたことがないな。

推しのキャラクターなんかはいないのかい?」

「あー、特には無いですね」

確かに推しとして思い浮かぶキャラクターはいない。

「それが書けない原因だな。

私が改善する魔法の言葉を教えよう。

毎日唱えればスランプ脱出だ」

先輩はにっこり笑って言った。



「萌え萌えキュン♡」



俺は、無言で部室を後にした――




―― 解説 ――


777文字のオリジナルは、

https://kakuyomu.jp/works/16817330654939069907

で公開しています。


カクマラソン参加の777文字縛り、26日目の投稿でした。

前回の「執筆ネタをひねり出す方法教えてください」に続き、ネタがないネタとなっていますね。

最も、文芸部関連の話は半分近くは小説がかけない、ネタがない、と言う筆者の代弁のような、ガス抜き目的のノンフィクション要素が原動力なので仕方がなかったのでした。


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