相続放棄

健さん

第1話

俺の名前は一郎。弟がいる。名前は次郎。俺は、55歳になるのだが、今まで1回も結婚したことがなく、独身貴族だ。(古いのう!)弟は、カミさんと、もうすでに成人したが、男の子と、女の子がいる。まだ、ローンは残ってるらしいが、マイホームもある。俺より3つ下で52歳だ。母親は、4年前に、心筋梗塞で他界している。母親の財産は、ほとんどなかった。いまだに、母親の着ていた洋服、着物など、所せましと、部屋に飾られている。父親が、あえて、処分したがらなかったのだ。多分、寂しかったのだろうな。その父親も、ちょうど、1か月前に、肺炎で、亡くなった。85歳だった。それまで、俺は、親父の面倒、介護は、みてきた。亡くなる3,4か月前には、すでに、”呆けて”きて、食事したばっかりなのに、「早く!メシ食わせろ!」と、怒鳴り散らす。もう認知症の初期段階だ。後悔しているのは、呆ける前に、相続のことちゃんと、話合えばよかったと。はっきし言って、何が、どこにしまってあるのか、全くわからない。この家の権利書もどこにあるのやら。だから、貯金通帳やらも、わからない仕舞いだ。わからないが、押し入れの中に、少し大きめの金庫が、あるのだが、暗証番号が、わからないので、開けれない。無用の長物だ。でも、生前、よく、株で大損したとか、言っていたものな。実際どれだけの、財産、金が、家の中に、眠っているのやら。しかし、親父が亡くなって1週間ぐらい経って、色々と、”物色”してみた。親父の下着とか、入っているタンスから、な、な、んと、現金が、隠してあった。100万円だ!これこそ、タンス預金だな。やったぜ!弟には、黙っておこう。ヒヒヒヒ、、。黙ってりゃあ、わからないからな。他にも、どこかにあるのではないかと、探したが、ない。やはり、あの金庫の中なのか?どこかの本に書いてあったが、亡くなってから、3か月すぎたら、相続放棄できなくなると、書いてあったな。もし、あとから、現金とか、たんまりでてきたら、次郎に2ぶんの1持っていかれてしまう。いずれにしても、あいつに、放棄してもらわないとな。今まで、俺が、介護の世話を、デイサービスの人と、やってきたんだ。心情的に、全財産俺が、相続の権利が、あると思うのだが、法律は、違う。もう”取り分”は、決まっているのだ。ほんとに、矛盾している。だから、相続問題で、兄弟で揉めて、ついには、殺人事件などに発展するのだ。知り合いの弁護士も、この問題は、実に多いらしい。ずっと、介護していて、その間全く顔を見せず知らん顔して、亡くなって、”俺の取り分のお金ちょうだい”は、ないだろう!とりあえず、あいつには、相続放棄してもらおう。俺は、早速ヤツに電話した。「次郎か。相続の件で話があるから、明日家に来い。」その日の夜。次郎は、夢を見た。「次郎!」「親父。介護を、兄貴にばかり押し付けて、顔も出さないですまなかった。」「もう、そのことは、いいよ。何も怒ってない。いつだったか、俺の誕生日の日お前から、S〇IKOの腕時計貰ったけど、ほんと、嬉しかったよ。一郎は、何もくれなかったけどな。”逝く”時に、この時計一緒に持たせてくれたおかげで、”こっち”にきても、この時計役にたってるよ。大事にしてるよ。それで、お前にお礼と、言っちゃあなんだが、台所に、収納庫が、あるだろう。その中に茶色の漬物入れがある。その中に、”全財産”が、入れてあるからお前にやる。一郎には、見つかるな。」「親父~!」と、俺は、目が覚めた。(ただの夢か?それとも、正夢か?)俺は、早速、実家に向かった。「次郎、相続放棄してくれないか。あっちこっち探したが、財産らしきものは、ないし、金庫は、あるけど、開けられない。お前は、家があるけど、俺には、この家しかない。なんとか、頼むよ。」「そうだな、、、、」すると、兄貴は、煙草を吸うつもりで、いたが、切れていたらしく、「悪い。タバコが切れた。ちょっと、そこまで、行って買ってくるから、それまで考えていてくれ。」と、兄貴は、出ていった。(よ~しチャンスだ!)俺は、早速台所へ。収納庫を開けた。どれどれ、調味料が、一杯だな。その中に夢で言っていた、茶色の漬物入れが、あった。俺は、それを引き上げ、中を見た。おー!!あるやないけ!んんんんん?500万は、あるぞ!夢は、正夢だった。それから、しばらくして、兄貴が、帰ってきた。「色々考えたけど、俺、相続放棄するよ!」「なんだ、お前、ニヤニヤしてからに。」「いや、別に。」そして、俺は、実家を後にした。「やったぜ!これで、100万円は、俺の物だ。」一郎は、1回万歳をした。そのころ、次郎は、車の中。笑いが止まらず、信号待ちで、3回万歳した。ちょうど、横に止まった車の中から、6歳ぐらいの女の子が、こちらを見て、一緒に、万歳してくれた。

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