第91話 魔人戦⑧
レベル差まであるか…いよいよマズいな。
揺れも激しくなって来た。後5分もしない内にここは沈むだろう。
甚大と交戦する茉央と明美。
魔法の威力が明らかに弱っている。
あんな威力では奴にダメージは与えられない。
「ほらほら、もうすぐ沈んじゃうよ。早くしないと。」
余裕の表情で目の前に立つ透吾。
さっきから回避に全神経を注いでやがる。
まともに戦う気がない相手に攻撃を当てるのは至難の業だ。その上、相手が格上ともなるとさらに難易度が高くなる。
「
その隙に茉央と明美を引き連れ、近くの茂みへと姿を隠した。
「何してるんですか。こんな所に隠れてる暇があるなら、さっさとこの島から脱出しないと——」
「それは無理だ。あの程度じゃ大した時間稼ぎにならない。水上で攻撃を受けたら対抗する手段がないだろ。」
敵は水中を自在に動ける生物を使うのに対して、こちらはギリギリ泳げる程度。
その上、背中に俺たちが乗っているともなれば流石の
その上、茉央と明美の主なスキルは炎と土。
水とは相性が悪過ぎる。
逃げ切るには、誰かが足止めをする必要がある。
「2人は
「でもそれじゃあ——「待って下さい!」
突如、茉央が声を荒げる。
「少しだけ私に時間を下さい。後少し…後少しで何か掴めそうなんです。レベルアップさえ出来れば、新しいスキルが手に入るかも…
ただの感ですけど…」
「いや、今はそれに賭けるしかない。
他に打つ手もないんだ。時間稼ぎは俺に任せて、金城さんはレベルアップを。」
茉央が崩れた洞窟へと侵入する。
外に魔獣は見当たらない。居るとしたら洞窟の中だけだからだ。
「明美!お前も一緒に行け。お前のスキルなら洞窟の倒壊を抑えられるだろ!」
地震の影響で洞窟は修復より早く崩壊している。
茉央一人が向かったところで崩壊に巻き込まれて潰されるのがオチだ。
「…任せましたよ。」
「大丈夫。どっちに転ぼうが5分だけ。そのくらいなら持たせられるさ。」
草介に背を向け、洞窟へと消えて行く。
「無駄だね。5階層の魔獣は僕らにビビって逃げ出した。この階層に魔獣は居ない。
君らがスタンピードって呼んでるの…あれ、僕ら魔人の所為なんだ。
僕ら魔人は力を蓄える時少し動けない時間があってね。魔獣を階層から追い出しているんだ。
追い出した魔獣が上階に行き、上階に来た魔獣に怯えてその場に居た魔獣は更に上階へ…それの繰り返しで魔獣たちは遂にダンジョン街へ出ていくのがスタンピードの真相だ。
君らが元凶なんて呼んでるのは彼らが戻ってこないよう見張りをさせてるだけの魔獣さ。」
「あれもお前らの所為なのかよ…つくづく迷惑な野郎だ。」
スタンピードが魔人の所為起きてるんだとしたら、全国各地で同時に魔人が現れた事になる。そんな偶然、あり得るのか?
わからない…わからないがこの事実は何としてでも伝えなければ…
「負けられない理由が増えたな…」
2人はこの場にいない。
これで気兼ねなく本気を出す事が出来る。
「はっ!その体で俺たちに勝てると思ってんのかよ。今のテメエなんか俺一人でも十分だぜ!」
巨大化した拳が草介へと振り下ろされる。
確実に当たった。そんな手応えが彼の拳にはあった。
しかしその直後、甚大の拳に焼き切れるような激痛が走った。
「グァァァァァ!!!痛え…痛えよ。何だ、これ?手が…手が溶けてやがる!」
地面をのたうち回る。
痛みが落ち着き、顔を上げるとそこには無傷の草介の姿があった。
「どうして…さっきの一撃は確実に当たった筈…」
「【瞬間防御】、一瞬だけ攻撃を無効化出来る能力だ。そしてお前の手を溶かしたのは俺の毒。普段は使わない様にしてるんだ。
触れたら溶けるなんて危なっかしくて仲間が居る場では使えない。」
体から赤黒い毒の塊が溢れ出ている。
それは地に落ちると地面をも溶かし、その威力を表していた。
「さあ、最終ラウンドと行こうか。」
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