第92話 魔人戦⑨

邪毒ヴェノム溶解液エイボン


 猛毒ヴェノム×猛毒ヴェノムの性質を持った超猛毒の液体。

 触れた者を瞬時に溶かすその性質は仲間が居る場に置いてとてもじゃないが使えるものではない。

 今の草介の力ではまだこの毒を上手くコントロールすることが出来ていない。

 身に纏うくらいが精一杯だ。


「まだ力を隠していたとは…君、イイね♪」


 唇を舐め、不的な笑みを浮かべた。






         ※


 一方その頃、洞窟内ではレベルアップの為に魔獣を探し回る茉央たちの姿があった。


「そんな…何処にも見当たらないなんて…」


 どれほど探し回ろうと魔獣の姿は見当たらない。残り時間は3分を切っていた。


「もう時間もないわ。洞窟内全てを見て回る事は不可能よ。」


 どうしたらいい…時間がない。

 これ以上洞窟にいても無意味なんじゃないか。上に行って草介の手助けをした方がいいんじゃないか。といった考えが頭を過ぎり始めたその時——


「なっ——茉央ちゃん!こっち!」


 地震の揺れが激しくなり、茉央の足元に亀裂が走る。咄嗟に明美が引き寄せた事で落ちずに済んだが、洞窟内に大穴が出来ていた。


「そんな…これじゃ魔獣を探すことなんて…」


 先へと続く道が閉ざされてしまった。

 2人に出来るのは来た道を戻る事だけだ。


 草介さんは私を信じてくれたのに…ごめんなさい。期待に応える事が出来なくて…

 助けて貰ってばかりでごめんなさい。

 ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい………


 謝罪の言葉が茉央の脳内を埋め尽くす。


 茉央は草介に助けて貰ってばかりだった。

 パートナーになった後もそれは変わらず、茉央は自分が草介のパートナーに相応しいのか、いつも悩んでいた。


 スタンピードで草介と氷華がたった2人で解決したという話を聞いた時、正直嫉妬した。

 私がパートナーでも同じ事が出来たかと言われたらそうではない事がわかっていたからだ。

 悔しかった…彼の隣で戦うことすら出来ない自分の実力が…


 私は沖縄市のスタンピードで少しだけ活躍した。だけどあれは、偶然私が倒した魔獣が元凶だっただけで、実力的には2階層ボス程度だろう。

 当時の私にしては頑張ったが、今思い返してみれば大した事はない。


 そして草介さんがいなくなった後、必死に努力して強くなった。

 帰って来たと聞いて今度こそ彼の隣で戦える。そう思っていた。


 諦めかけた茉央の肩を明美が掴む。


「一か八か、賭けだけど…茉央ちゃん、この穴目掛けて最大火力の炎帝を撃って。

 もしかしたらこの穴、下層まで続いてるかも知れない。目に見える場所に魔獣がいない今、これに賭けるしかない!」


 下が見えない程の大穴。

 草介が探索した限りではこの洞窟以外に下層へ向かえそうな場所はなかった。

 2人はそのことを知らないが、ここが6階層に繋がっている可能性は非常に高い。


 迷っている時間はない。

 もう時期、この場所は地震の影響で崩れ落ちてしまう。

 ダンジョンの修復は始まるだろうが、島の規模ともなればそれなりに時間もかかる。

 少なくとも、3人が溺れる方が早い。


「もうやるしかない……お願い、炎帝!!」


 残った魔力の大半を使い、穴目掛けて炎帝を放つ。約1分間もの間、炎を放ち続けた。

 しかし、その時は訪れてしまう。


 洞窟の壁が割れ、海水が洞窟内へと侵入してくる。


「そんな…間に合わなかった…」


 海水に流されて行く最中、頭の中に声が響いた。


 スキル【炎鳥ファイアバード】が進化し、スキル【炎鳥神フェニックス】を獲得しました。


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