第84話 魔人戦①

「ウゥゥゥゥ…オ…レガ…ヤル。」


 今まで巨人の横に突っ立っていた化け物が声を発する。


 あの化け物言葉を喋れるのか?

 魔獣とくっ付いてる人間の部分が喋ってやがる…気持ち悪い。それにしても、あいつどこかで見た様な…


 あんな見た目の化け物と会っているのなら忘れる筈もないのだが、なぜか既視感を感じる。


「そうだった。お前にやらせる約束だったな。悪い悪い。確実に殺せよ。」


 その言葉を言い終わると同時に化け物が猛スピードで突っ込んでくる。


 早い!だが直線的過ぎる。知能のない魔獣の動きそのものだ。


 攻撃を躱すと化け物はそのまま真っ直ぐ突き進み離れた場所で立ち止まった。


 あいつは気にしなくていい。動きは早いし力もありそうだが、知能がない。あんな攻撃、何度もやられても当たる気がしない。

 問題はこの巨大化する敵の方。

 こちらと会話出来る程の頭脳を持つ上に、体は人間以上に頑丈だ。おまけのスキルの様な技を使い徒党を組んでいる。


「お前らは一体なんだ?その姿、人間でも魔獣でもない。それに俺に何の恨みがある。お前らとは初対面だろうが。」


 こんな一度見たら忘れられない様な二人を覚えてない訳がない。


「まあそうだろうな。あいつは人一倍お前に恨みがあるが、俺はついでだ。本当の目的は金城茉央。あの女さえ大人しく死んでればこんな事にはならなかったんだ。」


 真の狙いは金城さんか。

 あの時死んでいればというのは一体……

待てよ…思い出した。あの化け物、何処かで見た事があると思ったらの。


 自分の推測が正しいか確認する為に、化け物へと近寄る。


 やっぱりあの男、何処かで見た事があると思ったら惑わしの森でデモンラビットに殺された男だ。それにあの体の部分はデモンラビットに似ている。

 双方確実に死んだ筈なのにどうして…まさか、人間と魔獣が合体して生き返ったとでもいうのか!?


「気付いたか。俺たちはあの日、パレードに遭遇し金城茉央を囮にした。体裁だけで出した依頼にお前が食いつき、結果としてホーンラビットの変異種の襲われる羽目になったんだ。」


 あの日、俺の目の前で死んだのはあの男1人だけ。3人組だったから2人は此処にいるとしてあと1人、まだ敵が残っている。


「もう1人は金城さんの所か?」


「こんな時まで女の心配か?かっこいいねぇ〜。心配しなくてもあの女にはしっかりと絶望を味合わせて殺してやるよ。」


「逆恨みもいいとこだな。最初に置き去りにしたのはお前らだろ。」


「知るかよ。盾になる事も出来ねえ無能は死ねばいいんだ。冥土の土産に教えてやる。

桑原甚大くわばらじんだい、そしてあの化け物が雅楽太雅がらくたいが

お前を殺す人間……いや、魔人の名だ。覚えておけ。」


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