第79話 熱中症には要注意

 ダンジョンには階層ごとに適正とされているレベルがある。

 1階層は1〜10、2階層は10〜20、3階層は20〜30、4階層30〜40……という感じだ。

 これらが分けられている理由は、10や20といったキリのいい数字にレベルアップする際は、それ相応のボスを討伐しないとレベルアップ出来ないようになっているからである。

 どんなに1階層に潜り続けてもボスを倒さなければ9レベルで止まり続ける。草介が6年間潜り続けても9レベルから上がらなかったのがいい例だ。


 因みに、ダンジョンに潜っていない草介がここまでレベルアップしているのは、スタンピードで6階層のボス相当の魔獣を討伐しているからである。



 4階層は燃え盛る大地が広がる荒野。

 不思議とその炎は消える事もなく、ただその場で燃え続けている。


「この階層はさっきの砂漠以上に体力を奪われるので水分補給はしっかりしておいて下さい。」


 炎が近くで燃えているので異常に暑い。立っているだけでも汗が出てくる。水分補給を怠ればあっという間に熱中症にでもなってしまいそうだ。


「4階層を抜ければ次の5階層には海があります。此処よりは涼しいので今日中に5階層到達を目指しましょう。」


 次は水場か。助かったな。こうも暑い場所ばかりだと、野営するにしても場所を選ばなければ倒れてしまう。それにしても、那覇ダンジョンをよく知る金城さんがいて助かった。

 ソロで潜ってたらかなり苦労しただろうな。


 道中数名の魔獣に襲われるも、安全マージンが取れている草介と茉央の敵ではなく、片手間にあしらわれてしまう。


 炎の体を持つ幽霊型の魔獣、フレイムゴースト。実態がない為、直接的な攻撃は効かず、倒す方法は魔法スキルによる攻撃か核と呼ばれる体の中に隠されている小さな玉を破壊するしかない。そんな面倒な魔獣なのだが、草介には核を見抜かれ、茉央には【炎帝】で一掃され抵抗すら出来る倒されてしまっていた。


 3人の間に会話はない。暑すぎるので無駄な体力を使いたくないのだ。





 あの男…榊草介の強さは知っていたが、金城茉央がこれ程の実力を持っているとは…

 話を聞けばまだ探索者になって半年しか経っていないと言う。それなのにあの強さ…正直少し羨ましい。あの【炎帝】は氷華先輩の【氷帝】に位置するレベルのスキル。あの力が私にもあれば……


 ぼーっとしていた。2人が強いから安心していたのかも知れない。ダンジョンにおいて気を抜くという行為がどれほど危険かを知っておきながら…



「——み……ろ……明美!避けろ!」


 草介の声に気付いた時には既に遅く、ゴブリンの進化系であるオークが目の前まで接近しており、棍棒を振りかぶっていた。


 しまった…これは…避けれない。


 避けれないと判断した明美はメイスを盾に攻撃を受け止める。その瞬間、足元の大地に亀裂が走った。


 え!?嘘…これって——


 亀裂は広がり穴となり、明美の体は下層へと落ちて行く。


「岩垣さん!」


 明美を助けようとしていた茉央は躊躇することもなく穴の中へと飛び込んだ。

 2人が落ちると同時に、その穴は閉じていく。


「クソッ!トラップエリアだったか…無事でいてくれよ。」


 トラップエリア…誰が何の目的で仕掛けられているのか不明だが、ダンジョンが探索者に牙を剥き、一気に下層へと落としてしまう罠だ。レベルが高ければ下層へ行けるいい手段になり得るが、レベルが足りない探索者からしてみれば、死ぬ可能性が高い危険な罠である。


 トラップは一度発生すると暫くの間は使えなくなる。閉じてしまえば次に開くのは数時間後かはたまた数日間後か……誰にもわからない。その上、次にトラップが作動した時に同じ場所に落ちるとも限らない。つまり、彼女達と同じ場所に行く事は不可能なのだ。


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