第78話 銃ではありません

 翌日、何事もなく朝を迎えた3人は早速デザートイーグル討伐へと向かっていた。


 砂漠の空に舞う一羽の鳥。4階層へ続く道はデザートイーグルの真下にある。


「これって通り抜けたり出来ないの?」


 道は地上にあり、デザートイーグルは上空にいる。わざわざ戦わずとも気を逸らせば通る事くらい出来そうなものだが…


「無理です。試した人もいたそうですが、4階層へ行こうとする人を優先的に狙うみたいです。変に隙が出来てしまうので、普通に倒した方がいいかと。」


 戦わずに済むのであればそうしたかったが仕方ない。


「では作戦通り行きますね。」


 明美が【大地変形アースフォーム】を発動し、砂を操り大きな手を作り出した。

 デザートイーグルを掴もうとしたところで口から空気砲を放たれ、砂の手は分散してしまう。


大地変形アースフォーム】は攻撃速度が遅い。あれじゃデザートイーグルを捕えきれないな。


「今度は私の番です。【炎鳥ファイアバード】」


 金城さんの周囲に10体の炎の鳥が出現する。大きさはカラス程で大したものではないが、その分機動力がある。素早く上空を飛び回りデザートイーグルを翻弄している。


「金城さんは前に倒した事あるんだよね?どうやったの?」


 彼女は那覇ダンジョンで5階層まで到達している。という事はデザートイーグルとも数回は戦って倒している事になる。


「【炎鳥ファイアバード】で少しずつダメージを与えて、【炎帝】や【魔女の祭壇】を使って倒していました。だけど、その方法は魔力をかなり使うのでやったのは最初の一回だけです。次からはパーティを組んで地道に削りながら倒してました。」


 なるほど、強さはそれ程でもないが戦いにくい相手だな。時間をかけて倒すか、魔力を消耗して一気に倒すかの2択。【五毒大帝ごどくたいてい】を使えばすぐに終わらせられるが、2人とも見たくないだろうし…2人に任せてみるか。


 炎鳥ファイアバードが突撃し、徐々にダメージを与えてはいるが、それも大して効いている様子はない。


 このままだとジリ貧だな。どうせ減る魔力なら早めに対策した方が消耗も少ないだろうし、何より時間が勿体無い。


「明美!あのスキル使え!」


 明美は上空にいる敵を地面に落とす術を持っている。半年間の付き合いで俺はそれを知っていた。


 使いたくなかったのか、悔しそうに歯軋りしながらもスキル発動の準備に入る。


「30秒でお願いします。それ以上は後に響くので。」


「10秒あれば十分だよ。」


 俺がデザートイーグルへ向かって走り出すと同時に、明美がスキルを唱える。


「【超重力空間グラビティエリア】」


 次の瞬間、空を飛んでいたデザートイーグルは何かに押し潰されるかのように地に落ちた。


超重力空間グラビティエリア】、指定した空間の重力を操作する能力。今回は重力を倍増させる事で敵を押し潰した。


【超加速】を使い【超重力空間グラビティエリア】の効果範囲ギリギリまで接近する。


「明美、解け。」


 デザートイーグルが重力から解放されると同時に刀で首を両断する。


超重力空間グラビティエリア】発動中だと効果範囲に入った瞬間、俺自身にも影響が出てしまう為手出しが出来ない。このスキル一番の難点だ。


「凄いコンビネーションでしたね。入る隙がありませんでした。」


「まあ、半年も組んでたから多少はね。それに次の階層からは明美のレベルも足りなくなる。気を引き締めていこう。」


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