第72話 強化イベント

 この街も変わったなぁ。スタンピードの被害があったから仕方ないか。しかし、景色が違えど半年ぶりともなると懐かしい。


 見覚えがあるようで少し違う風景を見ながら長曽根武具店へ向かう。


 隆二に聞いたが、長曽根武具店はあのスタンピードで潰れてしまったが、同じ土地でまた一からやり直してるそうだ。相変わらず店主の気性は荒く、客は来てない見たいだが…


「え〜と、この辺だと思うんだけどな……お!あったあった。」


 記憶を頼りに店を流していると漸く長曽根武具店を見つける。外装はただの木を繋げただけの不恰好な古屋になっていたが、工房だけは手を込んでおり、武器の質は落ちていないようだ。


 店の中に足を踏み入れるが相変わらず挨拶はない。虎徹は客の事なんか興味なさげに刀の手入れをしている。


 あの野郎…こういうところはまるで変わってないな。


 俺は虎徹に気づかれるようカウンターまで行き、机を叩いた。


「よう、虎徹。相変わらず最悪の接客態度だな。」


「ん?ああ、お前か。別にいいんだよ。店にだって客を選ぶ権利くらいある。ましてやここは俺の店。誰に売るかは自由に決めさせて貰う。」


 あれ?久しぶりに会ったのに全く驚かないな。帰って来る事は誰にも言ってなかったのに…誰かから聞いたのか?


「…俺がいる事に驚かないのか?」


「別にいちいち驚きゃしねえよ。俺の作った武器をそう簡単に壊されちゃ困るし、金をケチって半年以上顔見せねえ奴なんて山ほどいる。それに知らねえ間に死んでる奴だっているんだ。お前はまだ所在がわかってただけマシだよ。で、何のようだ?」


 まあそうか。確かに俺も武器の手入れは自分でしてたし、いちいち整備まで頼んでたら金がかかるから購入時以外は武具店に寄らなかったな。


「いや、大した用じゃないんだが武器の手入れでもして貰おうかと…後、借金あったろ?ここ最近県外行ってたから結構金貯まったんだ。ほら、返すよ。」


 俺は80万円が入った封筒を渡す。

 しかし、虎徹はそれを身もせず俺に返して来た。


「いらねえよ。金城茉央が自分で返してる。」


「あの子が?全額か?体の弱い母親がいるから大変じゃなかったのか?」


「お前なぁ…あの子、沖縄で最強の探索者って呼ばれてるんだぞ。そのくらいの額払うの訳ねえよ。あの子は良いぞ。何処ぞの誰かと違って俺の武具をずっと使ってくれる。」


 昨日会った時はそんな感じしなかったんだが…あの子もそんなに強くなったんだな。また一緒にダンジョンに潜るのが楽しみだ。

 しっかし虎徹の野郎、俺が武具を壊したから拗ねてやがる。いい歳して子供かよ。


「それは悪いと思ってるけど仕方ないだろ。スタンピードで壊されちまったんだから。」


「武具はいつか壊れるもんだ。だけどよぉ、お前壊すの早過ぎだろ。1ヶ月も持たねえなんてよ。はぁ……もういい。ほら、見せろ。」


 まあ、我ながら早かったとは思ってる。そもそも金城さんと出会ってから激動の日々が続いていた。僅か数週間の出来事だったが俺の探索者人生を変える分岐点になったのは間違いない。


 氷華に貰った新装備をカウンターに置いた。


「へえ、こいつが新装備か。結構いい装備だな。あの魔獣を素材に作ったのか。」


「ああ、【デモンアーマー】に【魔刀ヘルシング】。ヘルデモンワームを材料に作られている。攻撃力も耐久力もあるから結構使い勝手がいいぞ。」


【デモンアーマー】

 耐久力+368


【魔剣ヘルシング】

 攻撃力+226 魔力+100

 スキル【魔剣:剛】…魔力を消費し、攻撃力を一時的に強化する。



「なあ、お前次はいつ戦いに行く?時間があるならこの装備を俺に預けてくれないか?俺ならコイツらをもっと強く出来る。」


 ━━━━━━━━━━━━━━━━

 よろしければフォローと☆☆☆よろしくお願いします!!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る