第73話 準備は大切

「この装備はお前が作った物じゃ無いんだぞ。他人が作った物に後から強化するなんて可能なのか?」


 武器や防具は同じ素材を使っても作り手によって性能は変わる。職人にはそれぞれの作り方があり、大なり小なり違いはある。武具作りは繊細な作業であり、他人が手を加えてしまうと台無しになる場合があるという。

 その為、俺たち探索者は自身が買った武具は最低限のメンテナンスしかしないし、正式な点検や強化は購入した店の職人にしか頼まない。

 俺が今回虎徹の店に来ても点検しか頼むつもりがなかったのはそれが理由だ。


「ああ…この作り方、俺のやり方とほぼ同じだ。これなら手を加えても大丈夫だ。」


「まあ、強化してくれる分には構わないが、一応ダンジョンに潜りたいとは思ってるんだ。一時的でいいから何か装備を借りれないか?」


「その辺の奴を適当に持って行け。」


 そう言いながら、いかにも目玉商品という感じで展示されている場所を指差した。


「おい、本当にこの辺のでいいのか?高そうだぞ。」


 確認の為、虎徹に聞くが既に刀に夢中になってるようで全くこちらを見ようともしない。


「ああ、お前も相当強くなったんだろ。見ればわかる。今のお前に見合う武具ならそれくらいが妥当だ。貸し出しでもいいが割高だぞ。安くしてやるから買って行ったらどうだ。」


 う〜ん、どうするか。予備があった方が便利なのはわかるが、使わないのに家に置いておくのは邪魔だ。


「なあ、買ってもいいがこの店で預かってくれないか?俺の家狭いんだよ。」


「別に構わねえぞ。工房でいいなら置いといてやる。」


 場所も確保出来たし、これからも使う事になるならそれなりにいいの買わなきゃな。

 お、この着物っぽいのいいな。敏捷寄りのステータス配分で俺にピッタリだ。刀も同じシリーズでいくか。


 シリーズとは同じ魔獣の素材で作られた武具の事を指す。ステータスに整合性が出来るため、シリーズ物で纏めて買う探索者も多い。


【月下ノげっかのころも

 耐久力+90 敏捷力+210


【月下ノ太刀げっかのたち】※スキル付与武器

 攻撃力+200 敏捷力+30

 スキル【朔月さくげつ】…見えない斬撃を放つことが出来る。


「これにするよ。」


「月下シリーズ選んだのか。スキルの使い方には注意しろよ。魔獣には勿論有効だが、仲間にも見えねえからな。」


 虎徹に言われて気付いたが、確かに注意が必要だな。まあ、金城さんは後衛で俺より前には出ないし、氷華のところでも俺は基本一人で動くから問題ない。


「了解。ご忠告どうも。」


「2週間くらい経ったら出来上がるから受け取りに来いよ。」


 返事の代わりに手を振り、俺は店を出た。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━

 よろしければフォローと☆☆☆よろしくお願いします!!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る