第71話 朝のニュースは貴重な情報源

 ふぁぁ〜、此処は…そうか俺、帰って来てたんだった…


 翌朝、目が覚めると久しぶりの自室に少し戸惑ってしまったが、すぐに調子を取り戻し昨晩の残りのカレーを温める。カレーが出来上がるまでの間、ニュースを見ながら時間を潰していた。


『ニュースです。昨日、スタンピード未解決都市であった浜松ダンジョン奪還に成功しました。浜松ダンジョンは大規模の被害を受けており、元凶となっていた魔獣はクラーケンと呼ばれる海洋生物型魔獣で海に引き摺り込み探索者を倒す姿から【海上の悪魔】と恐れられていましたが、トップランカーである鳳凰院聖也ほうおういんせいやさんの手により単独で討伐に成功しました。他にも一宮ダンジョンを奪還した牧本虎吉まきもととらきちさん、松山ダンジョンを奪還した蝶野鈴芽ちょうのすずめさん、倉敷ダンジョンを奪還した小郡氷華おごおりひょうかさんなど数々の探索者たちが懸命に戦い、魔獣の手から土地を取り戻しています。』


 名だたる探索者の名前が次々と流れてくる。


 ほぉ〜さすがあのクラスの探索者たちはテレビにも報道されるもんだなぁ。ってか、倉敷ダンジョンの元凶倒したの俺なんだけど…


 それなりに名は通って来たが、俺はあくまでも小郡氷華のパーティメンバーという位置付けにいる。リーダーが氷華である以上、俺が倒そうが何も知らない人が見たらリーダーである氷華が倒したようにしか思われない。


 虎吉とらきちさんかぁ。懐かしいなぁ。


 牧本虎吉まきもととらきちとは救援部隊として共に戦った経験がある。虎吉さんは60歳を超えるベテラン探索者で、鍛え抜いた肉体とスキル、そして長年ダンジョンを生き抜いてきた知識を駆使して戦っていた。

 豊富なスキルで魔獣の弱点を突き、最低限の力で敵を倒す。あの姿はまさしく探索者に憧れであり、今でも鮮明に覚えている。

 結局、直接会話することは叶わなかったが一緒の戦場に立てただけでもいい思い出だ。


 テレビの続きを見ながら、温め終えたカレーを口にする。


 うん。やっぱり美味い!カレーは一日寝かせた方が美味しいというが、美月ちゃんのカレーは昨日も今日もどっちも美味しいな。


 カレーを食べ終え、ひとしきりの家事を終えるが、意外と時間は経たない。


 夕方くらいにはなると思ったんだけどな。

 このままだと暇すぎる。


「何をしようか…ダンジョンに行くのも悪くないが久しぶりに帰って来たんだしもう少しゆっくりしたいよな。……そうだ!長曽根武具店に行ってみるか。久しぶりに会うし、装備の点検をして貰うのも悪くない。」


 身支度を整え、出掛ける準備をする。


「さて、行きますか。」


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