第62話 注目されると緊張する

 ギルドの扉が開き、草介と小郡が中に入って来た。戦いを終えた探索者や、避難していた住民、各県の情報を集めているギルド職員、皆が一同に二人を見つめる。


 小郡はみんなに向けてピースサインをする。


「やりました!私たちの勝利です!」


 勝利宣言にギルド中は歓喜する。


「みんな嬉しそう。頑張って良かったね。」


「そうだな。」


 喜んでいるみんなを眺めているとギルド職員が数名駆け寄って来た。


「お二人とも酷い怪我です。手当てをしますので救護室へ。」


 ギルド職員の案内に従い救護室へと向かう。


「ねえ、草介ってさパーティとか入ってる?良かったら私と組まない?」


「残念ながら既にバディ組んでるよ。その子さえいいなら考えてもいいけど。」


「そっか。今度その子にも会わせてよ。後ずっと気になってたけど私の事は氷華ひょうかって呼んで。私はこっちだからじゃあね。」


 女性用の救護室へと入って行く氷華。


 職員さんは氷華と話している間に先に行ったし、俺も行くか。


 後を追い救護室へ入ろうとすると、誰かに服を引っ張られた。振り返り顔を見ると、その人物は榎本美月だった。


「美月ちゃん!無事だったんだね。良かったぁ〜。」


「えへへ、ギルドまで近かったからなんとか逃げ切れました。お父さんとお母さんも無事ですよ。お店は壊れたけど、建て直し次第再開するってお父さんが意気込んでました。」


 見かけなかったので心配してたが、無事で何よりだ。元気そうだし、生きててくれて良かった。


「あの…職員さんの話聞こえたんですけど…草介さんが倒したんですよね。私、魔獣なんて初めて見ましたけど、あんな怖いのと戦ってるなんて…草介さん凄いです!助けてくれてありがとうございます!」


 美月が頭を下げる。


「そんな…大した事はしてないよ。それより、みんなが無事で本当に良かった。お店が再開したらまた寄らせて貰うね。」


「はい!待ってますね。それじゃあ、私はこれで……最後に…これは私からのお礼です。」


 去り際、彼女は唇にキスをし立ち去って行った。


 俺は暫くの間唖然としていた。そっと触れた唇には僅かな感触が残っている。


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