第60話 那覇ダンジョン奪還作戦 四獣戦⑥

 ヘルデモンワームの体内から現れた草介に小郡は駆け寄り、抱き着いた。


「草介!無事で良かったぁ。」


「ああ、無事って程平気じゃないんだけど…まあ、なんとかなったよ。」


 よく見ると皮膚が爛れているところがあり、それなりのダメージを負っていることがわかった。


「どうやって生きてたの?私から見て、草介は確かに食べられてた。戦いながらだったし、ちゃんと見てた訳じゃないけど、あの状況から回避出来るとは思えない。」


「確かに俺はあの時食われた。だけど一か八か【瞬間防御】を使って噛まれるのだけは阻止したんだ。胃の中に入る前に【猛毒ヴェノム】の毒で自分の体を覆って消化液を可能な限り相殺して、俺を出すよう暴れ回った後、さっき毒龍ヒュドラで強引に吐かせた。」


 淡々と説明しているが、口で言うほど簡単ではない。というよりも、これは草介だから可能だったのだ。草介の毒耐性Ⅹがなければ体内に入った瞬間、体はたちまち溶かされ、消化されてしまうだろう。


「草介、よく聞いて。敵は残り3体。私一人ならもうダメだと思ってたけど草介が生きてるなら話は別。1体を集中して2人で狙って残りは氷狼に相手取らせる。草介の毒があれば2体は倒せるから毒浴びせたら時間稼ぎ。ワームは最後に2人で倒す。それで行こう。」


 氷狼神フェンリルを出していられる時間も長くはない。これが消えたら私たちの勝率は限りなくゼロになる。最後まで持たせないと…


 慎重に間合いを測っている中、草介が不用心に歩き出す。


「草介!何を…」


 なんの警戒もなく飛び出したら——


 小郡の忠告は間に合わず、魔獣は草介目掛けて各々得意な攻撃を放つ。

 コカトリスの炎のブレス、サンダーバードの雷撃+壊風、ヘルデモンワームの猛毒玉。

 今の体力がない2人がその身で受けて無事なわけがない。食らえば即死だ。


「【毒邪龍ヒュドラ】」


 先程まで使っていた毒龍とは違う。一際大きく凶々しい見た目をした九頭に分かれた蛇の様な龍の様な姿をしていた。

 毒邪龍ヒュドラは敵の攻撃を全てその身で受け止め、四散してしまった。


 新しい防御用のスキル?そんな見た目はしてなかったけど…助かった。


「小郡。この勝負、勝ったかも。」


「え?どういう意味?」


 草介の言葉の意味は直ぐにわかった。


 飛び散った毒邪龍ヒュドラの肉片が形を変え、各々が新たな毒邪龍ヒュドラへと姿を変えて行く。数秒でこの場には4体の毒邪龍ヒュドラが現れていた。


「喰らえ、毒邪龍ヒュドラ。」


 毒邪龍ヒュドラが各々の魔獣を絡めとり、口から毒を体内に流し込む。倒せど分裂し、更に数を増やして襲い掛かる毒邪龍ヒュドラ相手に、魔獣たちは次第に弱り毒耐性のあるヘルデモンワーム以外倒れていった。


「凄い。こうも簡単に…」


 その光景を見ていた小郡は絶句する。


 これ程までに強力なスキルがあるとは…

 スキルはレベルアップか、何かを成し遂げた時にしか現れない。という事はヘルデモンワームの体内で何かしたに違いない。


「小郡。悪いけどワームは任せていいか?

 刀はあいつの体内に置いて来てしまったからあいつ倒せそうなスキルがないんだ。」


 腰をポンポンと叩く草介。

 そこには確かに刀が刺さっていなかった。


 まあ、急に食べられちゃったら仕方ないよね。せっかく氷狼神フェンリル出してるし、私もいいとこ見せなきゃ。


 毒邪龍ヒュドラに動きを封じられているワーム目掛けて氷狼神フェンリルが突撃する。

 触れた箇所から瞬時に凍結させ体の芯まで一瞬で氷漬けになる。小郡が指を鳴らすと氷漬けになったワームは砕け、塵すら残さず消え去っていった。


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