第57話 那覇ダンジョン奪還作戦 四獣戦③

 魔獣に細心の注意を払いながら小郡に耳打ちする。


「一対一の状況を作り出したら倒せるか?」


「……時間はどれくらい稼げる?」


「素直に言えば1分程度。無茶をするなら10分持たせる。」


 本当に正直に言えば1分だって難しい。そもそもあの魔獣達は俺のことなんて眼中にない。羽虫みたいなものだ。目障りだと思えばいつでも叩き潰せる。そんな存在。


 このような状況になってしまっては、俺の命など大した価値はない。最優先は小郡氷華を生き残らせる事。彼女はトップランカーであり、日本国内でも最上位に位置する戦闘力を誇っている。相方が俺でなく、同等の実力を持つ人間なら既に魔獣達は全滅していただろう。


 俺だって死にたいわけじゃない。何がなんでも生き延びてやるという気概は持っている。だが、ここで小郡を見捨て逃げ帰ったところで死期を先延ばしにするだけ。彼女を失った戦力では那覇ダンジョン奪還は不可能だ。再突入する時にはまた別の強力な魔獣が出て来ているかも知れない。そうなるくらいならこの4体の元へ辿り着いた今がチャンス。


「一番早く倒せそうな魔獣を引き連れて行け。残りは俺が請け負う。」


「…ごめん。すぐに終わらせて戻って来るから。」


 彼女もそうしなければ勝てない事を理解しているのだろう。申し訳なさそうな顔をしながら、フロストウルフを弾き飛ばし、自身も後を追って行った。残りの魔獣も彼女達の後を追おうとするが、その身に毒龍ヒュドラが巻き付き動きを封じる。


「お前達の相手は俺だ。そう簡単には行かせねえよ。」



 ヘルデモンワーム以外には毒は有効な筈。体内に送り込んでやる。


 毒龍ヒュドラは一際姿を大きくし、毒の体で魔獣達を呑み込もうとする。

 しかし、コカトリスは炎、サンダーバードは雷、ヘルデモンワームは毒と各々の方法で毒龍ヒュドラを相殺した。


 邪魔をした事で怒りを買ったのか、三体の魔獣は草介を睨む。


 嫌な予感がし、咄嗟に加速を使いその場を離れる。すると先程まで立っていた場所に炎が立ち昇っていた。


 あれがコカトリスの炎…いつの間に放たれていたんだ。全く見えなかった。


 炎を眺めていると周囲が急激に暗くなる。


 影…?——マズイ!背後だ!?


 一瞬視界を炎に移した。その瞬間にサンダーバードは草介の背後に移動し、待ち構えていたのだ。


 サンダーバードが羽ばたく。

 巨大な羽からは突風が巻き起こり、風の刃へと変化し襲って来る。追撃と言わんばかりに風に紛れ雷が放たれた。


 駄目だ…避けようにもこの突風じゃ身動きが取れない。


 雷は動けない草介の身に襲いかかる。


 その身に雷を受け、倒れ込んだ草介をヘルデモンワームが見下ろしている。


「参ったな…まるで歯が立たねえや。まさか最後はお前に食われるなんてな。」


 ヘルデモンワームは草介へと突撃し、彼の体を口の中へ放り込んだ。

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