第56話 那覇ダンジョン奪還作戦 四獣戦②

 ヘルデモンワームは俺の渾身の一撃を受けてなお、ピンピンしている。俺の事など気にする様子もなく、倒れた体を起き上がらせ、再び破壊活動を始めた。


 無理だ…今の俺に奴を倒す手段はない。

 どうする?足止めに徹するにしてもこちらを気に留める様子すらない。一心不乱に近くの建物を破壊しながらより人の多い方へと突き進んでいる。


 ちっ!取り敢えずこれ以上先に進ませないようにしないと。幸いスピードは遅い。俺を敵だと認識させて、逃げ切る事くらい出来る。


「こっち見やがれ!」


 新たに手にしたスキル【毒龍ヒュドラ】を発動させる。


 これが最後の望みだ。頼む…せめて奴を足止め出来るスキルであってくれ…!


 草介の背後から毒の龍が二匹姿を現す。龍はヘルデモンワームの体を絡め取りその動きを止めた。


 よし!なんとか進行を止めた…だがなんて強さだ。この拘束も長くは持たないぞ。


 毒龍ヒュドラの拘束が解けかけたその時、突如として氷塊がヘルデモンワームを覆い尽くした。


 これは——小郡か!まさか、もう向こうが片付いたのか?


 氷海が来た方向を振り返ろうとすると、草介の横を人の様な何かが通り過ぎ、家へと衝突した。


 今、何が飛んできた…?


 恐る恐る、飛来して来たものの正体を見るとそこには小郡氷華の姿があった。


「小郡!!」


「ごめんねぇ…ちょっとミスしちゃった。草介だけでも逃げて…」


 手には火傷の痕があり、体中裂傷でボロボロだ。


 いくら小郡とはいえ、三体一は無理があったんだ。恐らく、勝てないと悟った小郡は俺だけでも助けようとヘルデモンワームの動きを封じたに違いない。


 逃げようにも既に他の魔獣に包囲され、逃げ場を無くしている。唯一、通れる箇所は凍結したヘルデモンワームの所だがこの三体を相手に逃げ切れるかどうか…


 小郡が草介の横へと降り立つ。


「一瞬、動きを止めるくらいならまだ出来るから草介はその隙に逃げて。こいつらはトップランカーが2人以上じゃないと太刀打ち出来ない。ギルドに戻って救援要請してくれたらなんとかなるかも知れないから。私は……助けが来るまで粘ってみるよ。」


 小郡だってわかってるはずだ。助けなんて早々来ない事を。スタンピードは全国各地で発生している。救援が来るには2日以上は必要だろう。ましてはここは沖縄。他の地域よりも遠い場所にあり、最も救援は期待出来ない。自分たちでどうにかするしかないのだ。


「残念だけど、その案は無理みたいだ。あいつの拘束も解けるみたいだし…」


 草介の視線の先には、氷塊が崩れ始めているヘルデモンワームの姿があった。


「うそ…動けなくするくらいなら後10分は持つ筈なのに…どうして…」


「氷が内側から溶かされてる。奴は毒の粘膜を纏ってたからそこから溶かされ始めたんだと思う。どっちにしろ、これで逃げ道は無くなったって訳だ。」


 逃げ場はなく、4体の魔獣に囲まれてる状態。しかも全てが格上と来た。さて…どうするか。



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